2010年12月5日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 東北新幹線が、全線開通しました。東京と新青森が3時間20分と聞けば、「上野発の夜行列車降りたときから…」の歌から思い描く“遠い北の国・青森”の像は薄れます▼1891年に東北本線の全線が通った時、上野・青森間は26時間かかりました。1906年、東北本線は国有鉄道になります。当時もまだ、全線は20時間を超える長旅でした▼同年冬、東京朝日新聞の記者だった杉村楚人冠(そじんかん)が東北地方を取材しています。前年の大冷害で苦しむ農村へ。彼は、深い雪と氷に閉ざされた飢えの村の行く先々で、あまりのむごさに涙を禁じえません▼なかでもあわれと憤りを誘ったのが、軍人の家族の飢えです。宮城県花山村(当時)の一家。日露戦争が終わっても、あるじはまだ帰らない。軒が傾き壁は破れたあばら屋に、大根と菜を刻み込んだ黄色い輸入米を1日1回か2回の食事。3人の子が、やせ細り青ざめて、父の帰りを待つ▼岩手県厳美村(同)の少年は、一家を支え、学校を休んで炭を焼く。兄2人が日露戦争にゆき、長兄は戦死、次兄は出征先に。郡長が「学校と炭焼きとどっちが面白いか」と聞けば、彼はうつむき思案し、涙を流してかすかに答える。「炭焼きが面白いです…」▼NHKが今日、ドラマ「坂の上の雲」を再開します。日露戦争と軍人を描き、原作の司馬遼太郎さんが、好戦劇とみられるのを案じ映像化を禁じた「坂の上の雲」。あえてドラマ化に挑んだNHKは、日露戦争の時代の真実にどこまで迫るのでしょう。





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