2010年12月4日(土)「しんぶん赤旗」
主張
兵器産業育成
「死の商人」国家の道進むのか
防衛省が、自衛隊向けに兵器を生産してきた軍需産業の育成・強化に乗り出しています。国内向けだけでなく、兵器の輸出を規制してきた「武器輸出三原則」を骨抜きにし、共同生産や輸出も可能にするねらいと一体です。
憲法で戦争を放棄し、軍隊も持たないとしてきた戦後の日本は、軍需ではなく民需に依存することで経済を発展させてきました。軍需産業を育成・強化し、海外にも兵器を輸出できるようにしようという防衛省や財界・兵器産業の企ては、憲法の平和原則そのものを踏みにじるものです。「死の商人」国家の道は絶対に許されません。
新「大綱」を先取りして
兵器産業の強化をねらう防衛省は、11月末から相次いで兵器産業の関係者などを集めた「防衛生産・技術基盤研究会」や、北沢俊美防衛相と関連企業との意見交換会を開いています。新「防衛計画の大綱」の策定が大詰めを迎えていることもあり、「大綱」に盛り込む「武器輸出三原則」見直しを前提に、「選択と集中」の考え方で、兵器生産や技術基盤のあり方について検討するためといいます。
「防衛計画の大綱」見直しに向け政府が設置した「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」は8月に発表した提言で、「防衛力を支える基盤の整備」が重要であり、「物的基盤」として「防衛産業・技術基盤の確立」が必要だとしました。「国産か輸入か」ではなく、「国際共同開発・共同生産」という第3の道も選択肢に加えるべきだなどと主張しています。防衛省の動きが、新「大綱」が決まる前からこうした方向を先取りしているのは明らかです。
財界はもっと露骨です。兵器産業だけでなく、財界の元締め・日本経団連が7月発表した「新しい防衛計画の大綱に向けた提言」は「防衛産業政策のあり方」として、「重点投資分野の明確化」や「新しい武器輸出管理原則の確立」などの注文をつけました。防衛省の検討が、こうした財界の要望にこたえていることも明白です。
防衛省や財界は、日本の兵器生産はほとんど自衛隊や在日米軍向けに限定されているうえ、予算も減っているので、兵器産業の基盤が強化されないといいます。しかし、日本の兵器生産の大所を押さえているのは、三菱重工業やIHIなどの巨大企業です。軍需部門の仕事が多少減っても民需部門でもうけており、政府がてこ入れするいわれはありません。
しかも巨大な兵器産業がねらっているのは、「選択と集中」で、仕事ももうけもますます巨大企業に集中させることです。「武器輸出三原則」を見直し、国際共同開発・生産ができるようにといっているのもそのためで、巨額の費用がかかる戦闘機や護衛艦、ミサイルなどの共同生産でうるおうのは一握りの巨大企業だけです。
平和原則を踏みにじる
もともと兵器の輸出や共同開発を規制してきた「武器輸出三原則」は、憲法の「平和原則に立脚した国是のひとつ」です。一握りの兵器産業のために、憲法の平和原則を踏みにじるのは許されません。
兵器産業のいいなりで予算をつぎ込んだため、経済のゆがみをひどくし、「産軍複合体」や「戦争経済」と批判されてきたのがアメリカです。日本はそうした誤りをおかすべきではありません。
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