2010年12月2日(木)「しんぶん赤旗」

日航の強引な解雇は無効

最高裁判例でも明らか

再建企業でも4要件適用


 日本航空は、経営破綻を理由に、強引な人員削減を行い、それを超過達成しても、さらにパイロットと客室乗務員を「整理解雇」しようとしています。

 しかし、会社が経営破綻し、再建中であっても、「整理解雇の4要件」は適用され、合理性のない解雇は無効になる―。最高裁で確定した判例があります。山田紡績事件です。

 同事件は、紡績業と不動産業を経営していた企業が2000年に経営破綻で民事再生手続きを開始し、紡績業を廃止し100人以上の労働者を解雇したものです。労働者は、解雇権乱用に当たるとして、労働契約上の地位確認を求め、裁判に訴えました。

 裁判は、05年2月の名古屋地裁判決、06年1月の名古屋高裁判決で、労働者側が勝利し、07年3月の最高裁決定で、労働者の勝利が確定しています。

 会社側は、一度経営破綻し、会社を再建するのだから、解雇は「やむを得ない」と主張しました。しかし、裁判所はいずれも「労働者に帰責性のない経営上の理由によってされる解雇」であるから「整理解雇法理」が適用されるとし、「整理解雇4要件」にもとづいて有効性を判断しています。

 「整理解雇の4要件」では、(1)人員削減がどうしても必要である(2)希望退職や一時帰休など解雇回避努力がつくされた(3)解雇者の選定基準、人選が客観的、合理的である(4)解雇手続きが妥当である―が求められます。

 債務超過は一事情として考慮されますが、ほかの要件を無視していいことにはなりません。

 地裁判決では、「被告(会社)は破産手続を申し立てたものではなく、企業としての存続を図ったものであることなどに照らすと、被告は、希望退職募集、配置転換等の解雇回避努力義務を免れないというべきである」と述べています。また同様に「解雇の必要性等を原告ら従業員や組合に対して誠実に説明すべき義務を負っていたというべきである」と指摘しています。

 高裁判決は、「控訴人(会社)は負債の存在を主張するのみで、それ以上には、その発生原因や債務の支払が不能であったかについて主張立証しない」と、破綻の原因を明らかにしない会社の態度を批判しています。

 日本航空の場合、「更生計画」に基づく会社本体の人員削減目標1500人に対し、希望退職応募者1620人と超過達成。営業利益も計画を大幅に上回り、すでに人員削減の必要性はありません。

 労組が提案したワークシェアリングを拒否し、解雇回避の努力を尽くしていません。労組への誠実な説明も怠っています。

 そもそも、日航の破綻原因となったのは、地方空港乱造など政府の航空行政や、ジャンボ機100機以上を米国から購入し、先物取引で失敗するなど日航経営陣の放漫経営です。原因にメスを入れないまま、労働者に犠牲を押し付けることは許されません。(田代正則)





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