2010年12月2日(木)「しんぶん赤旗」
主張
民主党税制提言
財界いいなりが目に余る
民主党の「税制改正プロジェクトチーム」が来年度税制の提言を大筋でとりまとめました。
政府税制調査会は法人税率引き下げの財源として、研究開発減税やナフサ(石油化学製品の原料)免税など大企業向け租税特別措置の縮小を検討しています。民主党の提言は「減税に対する経済界の期待」に反するとして大企業優遇税制の縮減に異を唱えました。
根拠がない法人税減税
財務省は研究開発減税の縮減で最大5100億円、ナフサ免税の縮減で最大1兆7200億円の増収を想定しています。これに反発した日本経団連は縮減に強く反対し、これら優遇税制は特別措置ではなく「むしろ本則化、恒久化すべきである」と主張しています。
民主党の提言は財界の要求通りに研究開発減税やナフサ免税の縮減に反対しました。特にナフサ免税について民主党は恒久化を求める方針だと報道されています。日本経団連の米倉弘昌会長は、この問題で直接の利害関係にある住友化学の会長です。民主党の財界いいなりの姿勢は目に余ります。
法人税率引き下げの目的として民主党の税制提言は「国際競争力の維持、国内産業空洞化防止と雇用維持、国内への投資促進」を掲げています。財界の主張を引き写しにした表現ですが、この主張に根拠がないことは政府税調の議論でも明らかになっています。
11月初めの政府税調全体会合で峰崎直樹・内閣官房参与は次のように指摘しました。「(企業に)キャッシュフロー(資金)が入ってきても、実は(企業は)投資をしないで内部に留保してずっとたまっていく、これが200兆もある。ここに今の日本経済が置かれている状況がある」。だから、減税すれば投資に向かうという話は「非常に疑問に思う」。
この日の政府税調の資料には、峰崎氏の主張を裏付ける資料が掲載されています。法人税率を引き下げても、社員への還元や設備投資・雇用拡大ではなく内部留保や借入金返済に回す企業のほうが多いという民間信用調査会社の調査結果―。企業の今後の海外移転の大きな理由は「消費地に近いから」が最も多く、「安価な人件費」「安価な部品・原材料」「為替」と続き、「税負担」を挙げた企業は圧倒的な少数派だという経産省の調査結果―。
財務省は基礎年金支給額の50%を国が負担している措置は「財源確保が困難」だとして負担割合を大幅に引き下げる方針です。暮らしの予算が確保できないと言っているのに、空前の金あまり状態の大企業に減税で何兆円もばらまくなどまったく論外です。
財界流の議論は転換を
基礎年金の財源問題で野田佳彦財務相は消費税増税を急ぐ姿勢を示しました。民主党の「税と社会保障の抜本改革調査会」は、社会保障の財源として消費税を含む税制の抜本改革に一刻も早く着手するよう求める方針です。
消費税は低所得者や中小企業には重い負担ですが、力の強い大企業は1円も負担しないで済む税金です。法人税減税と消費税増税を前提にした財界流の議論を根本から転換する必要があります。
政府税調で示された大企業優遇税制の是正策は、法人税率引き下げの財源としてではなく、基礎年金など暮らしの予算を確保する手だてとして活用すべきです。
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