2010年11月29日(月)「しんぶん赤旗」
主張
子育て「新システム」
子どもと保育に格差許さない
民主党政権が来年の通常国会に法案提出をめざす「子ども・子育て新システム」に、保育園の父母や関係者、国民から、「公的保育を壊さないで」と、反対の声がひろがっています。東京都内で14日開催された集会には4800人が参加、銀座パレードで「国は保育に責任を」と訴えました。
保育が「自己責任」に
「新システム」は「幼保一体化」を目玉に、「すべての子どもに質の高い幼児教育・保育を保障する」などをかかげていますが、その中心には保育のあり方を根本からくつがえそうとするねらいがあります。公的保育制度の根幹である自治体の保育実施責任をなくして保育を親の「自己責任」とする、自公政権から引き継いだ方向です。
幼稚園と保育所を一体化した「子ども園」の入所は、現在の市町村に申し込む保育所の仕組みを変え、保護者が自分で探して契約する「直接契約」にします。政府の検討会では、入所時の選抜を、基準の公表などの条件をつけて認めることまで検討しています。
利用料も収入に応じたものから利用時間に応じた応益負担にし、認定時間を超えた分は全額自己負担もありうるといいます。独自の教育内容や体操・音楽等の課外活動の追加料金を認め、入学金や受験料の徴収も検討されています。事実上の自由価格化です。親の収入にかかわらずどの子も平等に良い保育が受けられ、父母が安心して働き続けられるという保育の根本を揺るがすものです。
障害のある親子、低所得家庭が排除され、負担増から利用をあきらめ、子どもが放置される事態も懸念されます。すでに介護や障害者福祉で問題化している利用抑制や逆選別が、「子ども園」で起きない保障はないのです。親の収入による選別と格差を乳幼児期の子どもたちにひろげることは絶対に許すわけにはいきません。
これまで国が決めていた施設等の基準を自治体まかせにする方向も検討されています。全国知事会も、施設面積や保育士配置を市町村の自由にすること、3歳未満児の給食の外部搬入容認など、「規制緩和」を先取りする「特区」を提案しました。国の基準がなくなれば、自治体ごとの格差がひろがり、現在でも低すぎる保育所基準がさらに引き下げられ、保育の質の低下が危惧(きぐ)されます。
「新システム」では、サービスの量を企業頼みで増やそうとしており、そのために事業者の参入基準をできるだけ低くする方向です。保育に対する国と自治体の責任を後退させ、格差拡大と保育水準の引き下げ、子どもと親に負担をおしつける「新システム」の検討はストップすべきです。
公的責任で保育の拡充を
安心して預けられる保育の拡充は、国と自治体の責任が明確な現行保育制度の根幹があってこそ可能です。幼稚園団体や日本保育協会などの保育団体もそれぞれ、「幼児教育の質低下をきたさないよう国・都道府県の責任を明確に」「児童福祉法第24条にもとづく公的保育制度の堅持・拡充を」と意見表明しています。
国の保育・子育て予算の大幅増額、国と自治体の責任による認可保育所建設、学童保育の拡充、無認可保育所への助成など子育てへの支援の抜本的強化を求める共同を大きくひろげていきましょう。
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