2010年11月28日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ヘビをみたとたん、ふるえあがる人は多い。しかしヘビ嫌いも、先日の報道に少し救われる気持ちがしたかもしれません▼「人間は生まれつきヘビをこわがる」という説が実験でたしかめられた、というのですから。京都大学霊長類研究所の正高信男教授らの実験です。3歳児20人、4歳児34人、おとな20人に9枚の写真をみせ、時間を計りました▼花の写真8枚とヘビの写真1枚の中からヘビをみつける時間。反対に、ヘビ8枚と花1枚の中から花をみつける時間。すると、おとなもヘビをみたことのない3・4歳児も、同じくヘビを速くみつけました▼ヘビのかわりに形の似るホースやムカデの写真をみせても、花との時間差はなかったそうです。研究者は、ヒトが動植物の狩りや採集で暮らしていたときの習性が残っているのでは、と推しはかります。自然の状態で大地に生きていて、毒ヘビにでも襲われる恐怖が絶えなかったのでしょうか▼ヘビの苦手な人は、平気でつかんでかわいがるような人を、うらやましく思います。“自分には無理。度胸がないのだ”とか、“自分は偏見を持っているのだろうか”と。しかし、「生まれつき」といわれれば、たしかに慰められます▼もちろん、一つの説です。お説通りだとしても、別の疑問が生まれます。ならばなぜ、ヘビをあまりこわがらない人が生まれたのか。人間が、人種や外見、身なりなどによる他人への偏見をどうやってなくしてゆくかの、ヒントの一つがあるようにも思えるのですが。