2010年11月28日(日)「しんぶん赤旗」

主張

民主「防衛大綱」提言

自民党以上に危険な内容だ


 民主党の外交安全保障調査会が新「防衛計画の大綱」の策定に向けた「提言」案をまとめました。30日に政調会の了承を得て政府に提出するといいます。

 「提言」は、「基盤的防衛力構想」からの「決別」、「武器輸出三原則」の見直し、海外派兵恒久法の制定など、どれも憲法の平和原則を踏みにじる重大な内容で、いずれも自民党政権でさえやれなかったものです。昨年の総選挙や今年の参議院選挙の「マニフェスト(政権公約)」でさえ明らかにせず、これらの見直しを突然持ち出すのは、民主主義に反し、政治への信頼を裏切るものです。

海外での武力行使も

 「大綱」の見直しのため菅直人政権はすでに8月、政府が設置した「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の、「基盤的防衛力構想」や「武器輸出三原則」などの見直し報告を受け取っています。政府はこの報告と民主党の「提言」をみて、12月までに新「大綱」を策定する予定です。

 民主党の「提言」は、「これまで取り組まれてこなかった安全保障上の諸課題に対する大胆な改革提言」だとして、憲法の平和原則にもとづく諸原則を覆すことを隠していません。昨年の総選挙では「自衛権の行使は専守防衛に限定」(政策集)などとしていた民主党が、自民党政権時代以上に危険な提言を行うなど言語道断です。

 焦点のひとつが武器輸出を事実上禁止してきた「三原則」の見直しです。「提言」は、「平和構築や人道目的」なら完成品の輸出も認めるほか、秘密保持などの枠組みがあれば「共同開発・生産」国にも武器を輸出できるとしています。武器輸出で大もうけしたいという財界・軍需産業の要求を丸のみしたものです。日本の企業がつくった武器で他国民の命を奪う「死の商人」国家に日本を変える「提言」を、認めることはできません。

 海外派兵のための「包括法」の制定など、海外派兵路線をさらに強化するために、派兵の歯止めになっている諸原則を一掃しようとしていることも重大です。

 例えば、「駆けつけ警護のあり方の見直し」です。他国の兵員を守るために海外に派兵された自衛隊が武器を使用するという「駆けつけ警護」は、憲法が禁止する「武力の行使に当たるおそれがある」というのが政府の見解です。それを突き崩すのは、自衛隊が米軍要員を防護できるようにし、日米軍事一体化を強めるのが狙いです。

 「日本防衛」に限定するという建前だった「基盤的防衛力構想」と「決別する」といっているのも、自衛隊に素早い海外展開能力を持たせるためです。これらの原則の見直しが、日本に海外派兵の拡大を求める米国の要求に全面的に応えるためであるのは明白です。

「大綱」見直しは中止を

 対米従属姿勢を強め、「日米同盟の深化」を御旗に、自民党政権時代にはできなかったことまでやりとげようとする民主党の企ては、日本をいっそう危険な方向においやるものです。「中国海軍の動き」に対抗して沖縄県南西部の島へ陸自を展開させるなどという軍事力で対抗する立場では周辺諸国との軍事的緊張を強めるだけです。

 民主党と菅内閣は、憲法の平和原則を真っ向から踏みにじる「防衛計画の大綱」の見直しをきっぱりやめるべきです。





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