2010年11月27日(土)「しんぶん赤旗」

主張

COP16

温暖化対策に空白をつくるな


 地球温暖化への対策を議論する国連の会議(気候変動枠組み条約第16回締約国会議=COP16)が29日、メキシコのカンクンで開幕します。京都議定書第1約束期間に続く2013年からの対策の枠組みづくりが課題です。

待ったなしの課題

 温暖化への実効ある対策は、科学の知見から文字通り待ったなしです。世界気象機関(WMO)によると、温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの大気中の平均濃度は昨年、世界各地で過去最高を記録しました。

 しかし、世界の国ぐにが参加する新たな枠組みづくりは進んでいません。昨年のCOP15は課題を持ち越しましたが、COP16の準備会議でも進展がみられないままです。排出量を増やしている途上国に削減義務づけを要求する米国などと、温暖化の大きな責任は歴史的に大量に排出してきた先進国が負うべきだと主張する中国などとの対立は解けていません。

 国際交渉の困難を打開するため、主要国は利害を乗り越えて、新たな枠組みづくりに向けた努力と協力を強めるべきです。とりわけ先進国は「共通するが差異ある責任」の原則にたって、みずからの責任を果たす必要があります。

 それでも、12年末までに新たな枠組みを発足させるのは難しくなっています。対策に空白をつくることはできません。その間にも温暖化は進行します。京都議定書以来の国際的な取り組みを途切れさせれば、枠組みづくりにあらためて勢いをつけるのは困難です。京都議定書に参加していない国ぐにの合意を得るのも、いっそう困難になります。

 枠組みづくりの追求と並行して、欧州連合(EU)などが提起するように、当面、京都議定書を延長し、第2約束期間の目標を設定することが現実的です。

 日本は京都議定書を採択したCOP3の議長国です。しかし、菅直人政権はすべての主要国の参加に固執し、京都議定書の延長は「わが国の選択としてあり得ない」「とるべき道でない」(菅首相)と反対しています。

 延長に強く反対する産業界の姿勢が反映しています。石油、電力、鉄鋼、自動車など産業界9団体が連名で発表した提言は、菅首相の姿勢を評価したうえで、「万が一にも延長を受け入れることがないよう強く要望」しています。

 産業界は、米国や中国、インドが参加していない京都議定書は「不公平」だと非難します。排出削減への主要国の参加が必要なことは明らかですが、そうならない限り国際的な枠組みを拒否するという姿勢は、現状では対策そのものの否定にほかなりません。

 政府が実効ある排出規制に踏み込まず、対策を産業界の自主計画にまかせてきた結果、日本は京都議定書での削減目標を達成できないでいます。産業界が議定書延長を拒否するのも、産業界まかせのやり方を温存させたいからだといわれても仕方ありません。

京都議定書の延長を

 京都議定書第2約束期間の目標をめぐる交渉は、05年から行われています。日本が延長を拒否することは交渉に障害を持ち込むものであり、新たな枠組みへのすべての主要国の参加を求める立場も掘り崩します。それは国際的な孤立を招く道です。





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