2010年11月26日(金)「しんぶん赤旗」

主張

派遣村から2年

「年を越せない」不安膨らむ


 「年越し派遣村」から2年になろうとしています。

 いま、年末を前にして完全失業者は300万人を大きく超えています。なかでも1年以上にわたる長期失業者が昨年より33万人、一昨年より49万人も増えて128万人に上りました。

 すでに大都市圏の主要な鉄道駅の夜は無期限の派遣村のような状態です。冷え込みは日一日と厳しくなり、「果たして年を越せるのか」と不安が膨らんでいます。

拡大した貧困と格差

 2年前の秋、トヨタやキヤノンなど日本を代表する大企業が競い合うように「非正規切り」を進め、労働者から仕事も住居も奪って寒空にほうり出しました。これらの大手製造業は、経済危機で欧米の需要が急減したことに対応して在庫を減らすため、雇用と下請けを守る規制が緩い日本で集中的に生産調整を実施しました。

 派遣村をきっかけに大企業の無法な「労働者使い捨て」に対する怒り、人間らしく働ける労働のルールを壊してきた自民党政治への批判が広がりました。

 あれから2年、民主党に政権交代して1年たちましたが、人間らしい労働のルールづくりは遅れています。政府の労働者派遣法改正案は抜け穴だらけ、最低賃金はようやく平均時給が700円そこそこ、民主党が約束した1000円に遠く及びません。

 非正規雇用は前年より32万人増えて1775万人に達しました。円高と「エコカー補助金」の終了を口実に期間工の雇い止めも広がっています。厚労省の調査でも非正規雇用の雇い止めは、ことしに入って4万人を超えました。

 民間給与の減少にも歯止めがかからず、年収200万円以下の人がさらに増えて全体の4分の1を占めるに至っています。

 菅直人首相は2年前に派遣村を訪れ、その後の集会でも「生きようとしている人たちを支えられないような社会、政治であっては政治家、政党の存在意義はない」と発言しました。民主党政権の下で貧困と格差の拡大が止まらず、いっそう悪化している現実をどう考えているのでしょうか。

 派遣法は製造業派遣と登録型派遣を禁止して抜本改正し、有期雇用も「臨時・一時的な業務」に限定して非正規から正規への雇用の大転換を進める必要があります。最低賃金はヨーロッパでは1000円以上が当たり前となっています。中小・零細企業を手厚く支援し、下請け単価を引き上げて、異常に低い日本の最低賃金を少なくとも全国一律で1000円に引き上げることを急ぐべきです。

 賃金下落の流れを逆転させ、大企業の利益と過剰なため込み金を暮らしに還元させて内需を温めてこそ、経済を立て直すとともに新たな雇用も生み出せます。

求められる迅速な対応

 貧困を打開し、本当の意味で「年越し派遣村」を必要としない社会に変えていくことが重要です。それと同時に目の前の失業・生活困難に対する手当ては急務です。

 「非正規切り」をやめさせ、期間の定めのない直接雇用を拡大するよう大企業と経済界に対して政府が強く指導すること、雇用保険の失業給付の全国延長を実現すること、生活保護の“水際作戦”を根絶することなど迅速な対応が求められます。





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