2010年11月25日(木)「しんぶん赤旗」

やめてよ 保育新システム

子育ての不安が増える


 政府の出した「子ども・子育て新システム」(新システム)にたいして、反対の声がわき起こっています。新たな制度の問題点はどこにあるのか。保育関係者・保護者による反対アピールの記者会見(22日、東京都内)では、子育て不安の増大、保育の質の低下などが指摘されました。(都光子)


入れないのは自己責任?

事業者と契約 応益負担に

経済的理由から利用困難も

 「いま、短い産休・育休の期間すべてを使って保育所探しに費やしてしまうお母さんたちがどんなに多いことか。子育ての喜びを感じられないでいるんです」。ジャーナリストの猪熊弘子さんが、取材で会った子育て中のお母さんたちの声を代弁しました。自治体の窓口で「空きがない」といわれ、自力で認可外施設など、預け先を探しまわる保護者が激増しています。「新システムになったらすべて自己責任。働きながら子育てできなくなる」と訴えました。

 保育所や幼稚園の関係者、保護者、研究者など、子どもの健やかな成長・発達を願う人たちが集まって「新システムに反対し保育をよくする会」が10月に発足。「日本の保育・子育てをよくするためのアピール」を出しました。

 猪熊さんは呼びかけ人に名を連ねました。自身、4人の子どもの母親。現在も2人が保育所に通っています。

 呼びかけ人は現在141人。保育施設に預けてわが子を亡くした保護者やそれにかかわる弁護士も名を連ねています。営利目的による保育施設の広がりで保育内容の質が下がることを懸念しています。

 アピールの代表呼びかけ人の一人、鹿児島大学教授の伊藤周平さんは、「本当に支援を必要としている人が入れなくなる」と反対します。伊藤さんは障害者自立支援法や介護保険の研究者。新システムが介護保険制度と同じようになると指摘します。「介護認定を受けていても、実際に利用できていない人は100万人いる。利用料が払えないなどの理由からです。介護保険制度は新システムと同じく応益負担。若い夫婦が高い保育料を払えるでしょうか」と。「新システムの最大のねらいは保育制度解体」と強調しました。

ここが変わる

 政府は、新たな保育制度=「子ども・子育て新システム」(新システム)を構築するとして、「子ども・子育て新システム検討会議」を発足。6月に基本制度案要綱を確認しました。来年の通常国会に関連法案を提出し、2013年度の本格実施を目指しています。

 大きく変わるのは市町村の保育実施義務がなくなること。現在は児童福祉法で市町村に実施義務があり、「保育に欠ける」子どもに保育を提供しなければならないことになっています。保育料は親の収入に応じて決められる「応能負担」です。新システムでは、市町村の責務は保育の必要度の認定と、保護者向けの補助金支給などに限定されます。介護保険における「要介護度」認定と似たような形です。保育の供給は、現在認可制ですが、株式会社やNPOなどの参入を促進し、基準を満たせば参入も撤退も自由という事業者指定制度を導入します。

 保護者は直接事業者と契約。保育料も時間に応じて一律に決められる「応益負担」に。保護者の経済的負担が増えることが予想されます。


公的制度拡充こそ

日本保育協会など反対つぎつぎ

 新システムについては、幼稚園と保育所を一体化する案がだされていることから、全日本私立幼稚園連合会が緊急声明を出し、「幼稚園の改正をともなう構想には反対」「都道府県・国の責任も明確にすべきである」などとしています。

 日本保育協会は、「現行保育制度を堅持し、福祉的機能及び教育的機能を強化すること」「保育制度改革は公的責任を堅持すること」とした決議書をあげています。

 地方自治体からも国に意見書が上がっています。大分県議会は、新システムは「保育を産業化させようとするもの」であること、市町村の保育実施義務がなくなることから、「保護者の負担は増大し、家庭の経済的理由から保育所を利用できなくなる子どもたちが多数でることも懸念される」と指摘し、公的保育制度を堅持・拡充することを国に求めています。大阪府泉南市議会、神奈川県大和市議会、東京都荒川区議会も同様の意見書を可決しています。





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