2010年11月25日(木)「しんぶん赤旗」
主張
日豪ACSA
事実上の軍事同盟化許せない
自衛隊とオーストラリア軍が軍事物資や役務を融通しあう日豪物品役務相互提供協定(ACSA)が衆議院で可決され、参議院での審議が始まろうとしています。
米国以外の国で日本がACSAを結ぶのは豪州が初めてです。国連平和維持活動(PKO)やイラク戦争支援などで日豪が協力する機会が増えているので協定を結ぶというのが政府の説明です。しかし米国の軍事同盟国である日豪のACSA締結は、日豪関係を事実上の軍事同盟に変え、米軍を頂点とする日米豪3カ国の軍事協力をさらに強めることになります。
米軍事支援網の一翼
日豪ACSAは、日豪の共同軍事訓練やPKO、人道的な国際救援活動、「その他の活動」で、自衛隊と豪州軍がともに活動する際、必要とする物資や役務を相互に提供しあうための手続き協定です。
「その他の活動」を書き込むことによって、米国が始めたイラクやアフガニスタンのような戦争に自衛隊と豪州軍がともに参加する場合にも、燃料・水などの物資や輸送などの役務を提供しあい、軍事作戦を効果的に進めて戦争を支えることができるようになります。日豪ACSAは、戦争を放棄した憲法をもち、国会決議でも海外派兵が禁止された日本が締結することのできない憲法違反の協定であり、認めるわけにはいきません。
そもそも日豪間で軍事協定を結ぶことができるのかも問題です。1996年に結ばれた日米ACSAは日米安保条約を根拠にしています。安保条約は日本を米国の戦争に引き込む悪法とはいえ、ACSAを締結する法的な根拠であるのは事実です。日豪間にはそれさえありません。基本となる条約もないのに、提供や決済の方法を示す手続き協定で軍事協力の道を開くなど許されることではありません。こんなやり方がまかり通るなら、米国がACSAを結んだ諸国のどこともACSAを結び、軍事一体化の道が開けます。
日豪ACSAは、世界各地で活動している米軍の作戦行動に不可欠な軍事物資や役務を必要なときにはいつでも調達するための世界的・集団的軍事支援網の一翼です。米国防総省は今年2月発表の「2010年版4年ごとの国防計画の見直し」(QDR)で「米国は引き続き戦時下の国家」であり軍事態勢の強化が必要だとのべています。日豪のACSA締結は、日米豪3カ国間の軍事協力を強め、米軍の地球的規模の軍事態勢を強化することになるのは明白です。
いまアジアと世界では、紛争を戦争でなく、平和的・外交的に解決しようという流れが大勢になっています。政府は軍事一本やりの対応をやめ、憲法9条を生かして平和の流れを加速させる外交的努力をこそ強めるべきです。
「武器禁輸」厳守こそ
ACSAは日本の海外への武器輸出を禁止した「武器輸出三原則」にとっても重大です。日米、日豪のACSAは「武器・弾薬」の提供を除外しているものの、「部品・構成品」の提供を認めています。軍用機でいえば計器類や表示板です。軍用機と一体のものを切り分けて、「武器輸出三原則によらない」というのは通用しません。
日豪ACSAはやめ、憲法の平和原則を体現した「武器輸出三原則」を厳守することが重要です。
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