2010年11月23日(火)「しんぶん赤旗」
主張
柳田法相辞任
菅首相と政権の責任問われる
国会を軽視する発言で批判されてきた柳田稔法相が辞任し、仙谷由人官房長官が当面、兼任することになりました。法相としての資格にも資質にも欠ける柳田氏の、法相辞任は当然です。
柳田氏は辞任にあたっての記者会見でも、「補正予算の障害になってきたので身を引く」と、国会軽視の発言をまともに反省していません。まさに言語道断です。しかもことは柳田氏が辞めればそれですむ問題ではありません。任命権者である菅直人首相、柳田氏をかばい続けてきた菅政権の責任が問われています。
法相の資格も資質もない
「法務大臣というのは(国会答弁を)二つ覚えておけばいい。『個別の事案についてはお答えを差し控える』。わからなかったら使う。あとは『法と証拠にもとづいて適切にやっています』だ」―。
去る14日、選挙区の広島市内で開かれた集会での柳田氏の発言が、国会と国民を愚ろうするものだったことは明白です。柳田氏は国会で「思慮が足りなかった」と陳謝し、辞任会見では「気を許しすぎた。ジョーク(冗談)交じりの発言だった」とものべましたが、そんなことでごまかされていいものでは決してありません。
法相は法務行政だけでなく、司法とも密接に関連する検察の活動についても答弁を求められます。法相就任以来、柳田氏は33回も二つの国会答弁を繰り返していたといいます。郵便料金の不正をめぐる大阪地検特捜部による捜査資料の改ざんや、小沢一郎民主党元代表にたいする検察審査会での起訴議決、沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件やビデオ流出などをめぐってです。いずれも国政の焦点であり、柳田氏がそれらの問題で二つの言い回しを繰り返し、やり過ごせばいいと考えていたというのは、国会の審議を空洞化する、閣僚としての資格に著しく欠けるものだったのは明らかです。
しかも柳田氏は問題の発言の中で、国会議員になっていらい、法務関係の仕事には携わったことがなく、“ズブ”の素人であることを認めています。法相としての資質そのものが問われます。それを承知で柳田氏を法相に起用した、任命権者である菅首相の責任が問われることになるのも当然です。
見過ごせないのは、柳田氏や菅氏が法相の辞任や罷免は必要ないとし、国会で問責決議が可決されても辞任しないといい続けてきたことです。それ自体、国会の意思を踏みにじる居直りです。「補正予算の審議に影響が出るからやめた、やめてもらった」などというのは、まるで柳田氏を追及した側が悪いかのような開き直りです。柳田氏とそこまで柳田氏をかばい続けた菅政権の責任は重大です。
急低下する内閣支持率
菅内閣での閣僚の辞任は、参院選前郵政改革法案の扱いで金融・郵政担当相を辞任した亀井静香氏についで2人目ですが、仙谷官房長官や馬淵澄夫国交相には衆院で不信任案が提出されました。閣僚の陳謝も続いており、政権としてまともな状態ではありません。
菅内閣への支持率も、劇的に低下しています。暮らしと経済の問題で適切な手だてをとらず、外交の問題でも国民の失望を重ねているからです。民主党政権が自民党政権とどこが違うのか、国民の不信と怒りは強まるいっぽうです。