2010年11月22日(月)「しんぶん赤旗」
有料就職情報サイト
勤務地・給与 実際と違う
ドリームキャリア「理系ナビ」
10月初旬、「赤旗」社会部に1本の電話がありました。電話の主は4月にA社(本社・九州の地方都市)に新卒で入社した男性でした。内定時のトラブルが原因で、8月に退社したといいます。原因を追っていくと、1999年に原則自由化された有料職業紹介が新卒学生の就職におよぼす問題が明らかになりました。(染矢ゆう子)
今春、関東の国立大学を卒業した加藤拓也さん(22)=仮名=は、有料職業紹介事業所のドリームキャリア(本社・東京都渋谷区、以下ド社)が運営する就職情報サイト「理系ナビ」を通じて就職しました。
同大学の就職課には「理系ナビ」のパンフレットが置いてあります。インターネットの「理系ナビ」の画面には、A社の医療事業開発部の「勤務地=東京都千代田区」「給与=年俸制」といった求人が掲載されており、加藤さんはそこから求職の申し込みを行いました。
説明会はド社の担当者がド社の事務所で行い、面接はド社の事務所にA社の副社長が来て行われました。次の面接の連絡は、ド社の担当者からありました。
他社辞退を確認
昨年4月、ド社の担当者は加藤さんにA社の内定を知らせました。ド社の担当者は、「勤務地は東京だが、1、2年本社にいてもらうかもしれない」と告げた後に、他社の選考辞退を確かめました。
その翌日、ド社から電話でA社の雇用条件をメールで送ること、A社が後日、内定同意書を送るので、記入して返送してほしいという連絡がありました。その数日後に、A社から内定同意書が送付されたので、記入してA社に送り返しました。
問題は、A社から送られてきた雇用条件でした。「理系ナビ」の画面で示されていたものとは全然違いました。
「勤務先」の欄には「各部署への転勤有」と書かれ、全国の各事業所が記されていました。給与は月給制でした。
翌々月の6月、同じ大学で同社に入社が決まったBさんと食事をしたときに労働条件の違いに気づきました。しかし、「意見をいうと入社後に不利になるのでは」という気持ちからA社に違いを確かめませんでした。
変更の説明なし
ド社から、条件が変わったことについて説明はなく、同年7月には「東京オフィスの仲間が正式に決まりました」というメールが届いていました。
入社後、同じ部署のなかで1人だけ本社勤務だと告げられました。部長にたずねると「『1、2年たてば東京』だという話は何も聞いていない」といわれました。
会社に不信をもったまま仕事を続けられなくなり、今年8月に退社しました。
早期退職後の再就職は厳しい。面接では、なぜ退社したのかという質問にほとんどの時間が費やされ、落とされます。「せめて口頭で説明があれば、就職する前に考え直すことができた。誠実に原因を究明して、謝罪をしてほしい。二度と同じことがないようにしてほしい」。加藤さんは願っています。
本紙の取材に対し、ド社は「異なる勤務条件での採用となることはご理解いただいていたものと認識しています」と回答。A社は「(年俸制での採用でないことなどを)理系ナビを通じて確認をしています」「異なる採用条件(勤務地含めた採用条件)での採用になることを書面にて説明いたしております」としています。
有料職業紹介 公共職業安定所(ハローワーク)が無料で求人情報を提供するのに対し、有料職業紹介は、求人企業からの手数料で成り立ちます。手数料は(1)求職者の6カ月間の賃金額の10・5%が上限(2)労働局に届け出たもの(通常は年収の30―50%)―のいずれかです。
戦前の反省から「特別の技術を必要とする職業」に限って許可されていましたが、99年に原則自由化されました。日本共産党は「労働者保護が期待できない」として反対しました。
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