2010年11月21日(日)「しんぶん赤旗」
事業仕分け 身内からも批判
コスト最優先の矛盾
本当のムダ切り込めず
「やり続けることがいいというが、いたちごっこになり『仕分け予算がムダだ』と言われてもいけない。事業仕分けはどういう形になればいいのか、ご教授いただきたい」
事業仕分け第3弾後半の作業がすべて終わった18日夜、蓮舫行政刷新担当相はこう漏らしました。4日間にわたって過去の仕分け結果を検証した行政刷新会議(議長・菅直人首相)の「再仕分け」の混迷を、象徴した言葉でした。
今回で最後に
期間中から「この会議そのものが正当かどうか国民に判断してもらわないといけない。今回で最後にすべきだ」(森田高総務政務官)、「事業仕分けの急進的なものの言い方には危うさを感じる」(逢坂誠二総務政務官)など「仕分け」の行き詰まり、限界を指摘する声が身内から噴き出しました。
政権交代の象徴ともなった事業仕分け。旧自公政権の事業を対象に、官僚相手の派手なパフォーマンスで注目されてきました。しかし、民主党政権の予算案(概算要求)を仕分けする段になって、政府を組織する各省の政務三役が一番の批判者として立ち現れるという皮肉な事態が生まれたのです。
「廃止」判定が出た直後の会見で「予算要求はしていく。さらに拡大すべきだ」と述べた筒井信隆農林水産副大臣など、仕分け“無視”とも取れる発言も相次ぎました。
ひたすら“費用対効果”“コスト意識”で税金の使い方に切り込んでいく「仕分け」は、「総合特区制度」(内閣府)や「フューチャースクール推進事業」(総務省)など、菅政権のかかげる「成長戦略」の目玉事業にまで予算計上見送りや廃止の判定を下すことになりました。
強引な手法も
政策の中身を十分論議する時間も、当事者に発言機会を保障することもなく、短時間の議事さばきで事業をなで切りにする。今回も資料が百数十ページに及ぶ事業も含め1事業の審議予定時間は35〜55分しかなく、「仕分け人」は事業の基本的な内容ばかりを繰り返し質問。時間がくると廃止や予算削減の判定が出されるという強引な手法が目に付きました。「仕分け人」からは「民業圧迫」「費用対効果の検証」といった言葉ばかりが口をついて出てきました。
国民の暮らしへの影響より、経済的な視点のみが強調され、今回も、たとえば「国立病院運営費交付金」は仕分け人11人中10人が廃止または予算縮減と判定しました。判定後、国立病院のある病院長は「一見、かっこよく見えるが、(判定の結果に)彼らは責任を取れるのか。会計のことしか話していない」と語りました。
昨年11月に始まった事業仕分けは、ムダの徹底排除を掲げながら、最大のムダである軍事費や政党助成金には一貫して手をつけてきませんでした。本当のムダにも切り込めず、身内からも批判の火の手が上がる。「仕分け」事業が「仕分け」される矛盾に直面しています。(佐久間亮)
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