2010年11月20日(土)「しんぶん赤旗」
なぜクマは町に出る?
温暖化で生態系に変化
コナラ枯れ ドングリ実らず
京都でシンポ
「市道でツキノワグマと乗用車が衝突」(舞鶴市)などの被害が続発する京都府。「なぜクマは町に出る?」と題したシンポジウム(主催・北山の自然と文化をまもる会)が18日夜、京都市左京区で開かれ、里山の荒廃だけでなく地球温暖化による森林生態系そのものに「深刻な変化がでている」と警鐘を鳴らしました。(宇野龍彦)
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同シンポジウムは、クマの異常出没が社会問題になった2004年の開催に次ぐ2回目。同会代表幹事の榊原義道さんは「京都の山に入ると、クマのえさのドングリを実らせるコナラが4割も立ち枯れている。ナラ枯れ被害は南方系の昆虫の大量発生がもたらしたもので、クマの異常出没は長年つづいた里山の荒廃だけの問題ではない」と話します。
えさに異変
「丹波山地の森でなにがおこっているのか」と、1990年代以降の植生変化を報告した同会幹事の主原憲司さんは「クマ出没は、地球温暖化にともなう植生の変化、森林の変化を教えている」と、丹波山地など日本海側の植生変化をくわしく紹介しました。
主原さんは「えさを求めてクマが里山にでる件数が増えているが、里山の放置はここ数年の問題ではない」と指摘。04年、06年にもブナ、ミズナラ、コナラなどがともに実をつけない凶作になり、この頻度が増していることや、温暖化にともなう南方系昆虫の侵入被害の重大性に警鐘を発します。
「ミズナラはオトシブミの仲間のハイイロチョッキリに種子を落とされ、ナラ枯れもカシノナガキクイムシによって壊滅的な被害が広がった。クマだけでなく野生生物の存亡にかかわる影響が春から秋(10月)の高温と、暖冬で積雪量が減るという複合的な要因もからみ植生の変化が広がっている」と指摘します。
ササも枯死
ブナも高温障害で、実をつくらないシイナ化が多発。ブナの実やドングリだけでなく、クマの重要なえさになってきたチシマザサなどのタケノコにも異変が起こりました。積雪量の減少が招いたもので、雪に覆われなくなったチシマザサの葉が2月の夜間放射冷却で大量に凍害枯死。さらにチマキザサまでいっせい開花して枯死。かろうじて残ったササがシカの食害に脅かされるという悪循環におちいってしまいました。
榊原さんは「日本海側のこうした森林植生の衰退と人里へのクマの異常出没は、植物生態系を乱し、森林病害虫を北上させる温暖化への警告だ」と訴えています。
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