2010年11月20日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ハナミズキは、赤い葉をほとんど散らしました。サクラ、コブシときて、モミジやケヤキ。平地でも、紅葉、黄葉がすすみます。ナラも、追いかけるように色づいてきました▼秋、落葉樹は寒さに備えます。葉のつけ根をふさぐ、組織をつくります。離層です。離層ができるころ、葉と茎の間の物質の行き来が止まります。木は、生き抜くために葉っぱをすて去るのです▼春から夏に盛んな光合成を続け、養分を根や茎に送ってきた葉っぱ。“よく働いてくれた。ご苦労さま。だけど、君の仕事はもうないよ”というわけです。葉っぱは、紅葉や黄葉と化して燃えつきます▼雨の夜道で、ぬれ落ち葉がアスファルトに張りついていました。わびしい姿です。しかし翌日、同じところを通りかかり、足が止まりました。朝日をあび、鮮やかな黄金色を放つサクラのぬれ落ち葉。見事な、いのちの最後の輝きです▼かつて、定年後の男性をぬれ落ち葉にたとえる冗談がありました。仕事人間だった男性が家では邪魔者で、妻が外へ出かけるとべったりつきまとう。が、あのような自然美にふれると、ぬれ落ち葉もうっとうしい邪魔者とはみなせません▼数日後、同じ場所で。乾いた落ち葉の大群が風に舞い、右に左に曲線を描きながら道端に打ち寄せる。葉のこすれあう音が、自然の音楽を奏でる。落ち葉の芸術です。朽ちた落ち葉は、長い時間をかけ土へとかえってゆきます。自然にあるものに、無駄なものはないようです。もちろん、人間の世でも。