2010年11月18日(木)「しんぶん赤旗」
主張
柳田法相発言
「思慮不足」ですまされない
柳田稔法相が地元選挙区での会合で、「法相は国会答弁では二つ覚えておけばいい。『個別の事案については答えを差し控える』と『法と証拠にもとづいて適切にやっている』だ」と発言して、きびしい批判をあびています。
柳田法相は国会で「思慮が足りなかった」などと謝罪し、仙谷由人官房長官も「誤解を招く」と注意しましたが、それですまされていいものではありません。国会と国民を愚弄(ぐろう)し、法相としての資格にもかかわるもので、政治的責任が問われるべき発言です。
法相の資格にもかかわる
柳田法相の発言は、14日に広島市で開かれた「法相就任を祝う会」で飛び出したものです。マスメディアも取材し、報道した公開の席です。身内の会合という気安さはあったにせよ、決して「思慮が足りなかった」と弁解してすむものではありません。
柳田法相が国会答弁を「個別の事案については答えを差し控える」と「法と証拠にもとづいて」の二つの言い回しを繰り返すだけですむと本当に考えているとすれば、それこそ国会を軽視し、歴代法相の答弁をも冒涜(ぼうとく)することになります。他方、柳田氏にそうした配慮を働かすほどの「思慮」もないとすれば、それこそ法相としての資格にかかわります。
仙谷官房長官が法相を呼んで注意しながら、「大変誤解を生む発言」などとしかいわないのも、柳田法相をかばい、あたかも誤解したほうが悪いといわんばかりの言語道断な発言です。仙谷官房長官はもちろん、菅直人首相の責任も重大です。
問題なのは、9月の内閣改造で柳田氏が法相に就任していらい、郵便不正事件をめぐる大阪地検特捜部での捜査資料改ざん、小沢一郎民主党元代表にたいする検察審議会での起訴議決や、沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件にたいする検察の捜査の問題など、柳田氏が法相として国会で答弁を求められる機会は決して少なくなかったことです。これまでこれらの問題にたいする国会での質問に二つの言い回しを繰り返せばいいと、まともに答弁する姿勢がなかったのなら、まったく不誠実だったということです。
しかもいずれの問題も現在も進行中であり、柳田氏が今後も法相を続ければ、同じように答弁を求められるのは確実です。発言は「思慮不足」だったというだけで、今後もそうした答弁を改めないとすれば、それこそ柳田氏に、法相として国会で答弁する資格が問われます。
柳田法相は国会で陳謝したあと、「今後とも国会答弁に真摯(しんし)な姿勢で臨みたい」と答え、仙谷官房長官も「今後も気をつけて国会答弁や職務に精励するよう」注意したといいますが、まったくしらじらしい限りです。「今後とも」というのは、これまで同様、今後も態度を改めないということか。それこそ問題です。
任命権者の責任明確化を
法相を含め閣僚の任命権者は首相です。菅首相は問題が表面化したあと「直接何も聞かない中でコメントは控える」としかいいませんでしたが、重大な問題だと考えるなら、なぜ自らすすんで対応しないのか。
形ばかりの注意ですますなら、菅首相が任命権者としての責任を果たしたことにはなりません。