2010年11月18日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ヘビは、ただ「長すぎる」の一言。フランスの作家ルナールの『博物誌』は、むだのない表現で動物たちの姿を生きいきと描き出しました▼彼も、ハヤブサには驚いています。村の上空で円を描き始めたハヤブサ。庭のニワトリやガチョウが不安げに鳴きたてる。突然、つり下げていた糸が切れたようにハヤブサが落ちてきた。獲物は決まった▼と、「まるで重さでも足りなかったように、まだ地面へ着かないうちにぱったり止り、そこでひと羽搏(はばた)きして、また空へ上って行く」(岸田国士訳)。彼はみたのだ。私つまりルナールが、家の戸口で様子をうかがいながら、後ろにぴかぴか光る長いものを隠しているのを▼小惑星探査機「はやぶさ」の飛行は、こんなに鮮やかではなかったようです。時にまごつき、ふらつき、傷だらけで帰ってカプセルを残し燃え尽きた、はやぶさ。人は、さまざまな思いを重ね合わせました。けなげにがんばる子や孫のいとおしさ。危機をのりこえ生き抜く鳥の野性のたくましさ…▼そして、はやぶさはちゃんと獲物をくわえてきました。小惑星イトカワの微粒子です。人類が小惑星を発見し、来年で210年。小惑星からの砂粒の持ち帰りは、文字どおり人類史上初めての快挙です。はたして、微粒子にどんな謎が隠されているのでしょう▼すごいぞ、はやぶさくん。科学者たちの確かな導きで、太陽系の成り立ちや私たちのすむ生命の惑星・地球の起源を解き明かすための、未踏の大旅行をやってのけたのだから。