2010年11月17日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
都はるみさんの「アンコ椿は恋の花」から映画「男はつらいよ」の主題歌まで。数々の名曲、話題曲を世に送り出した作詞家、星野哲郎さんが亡くなりました▼星野さんは、終戦の翌年に商船学校を出ました。しかし、乗る商船は戦争で失われてありません。そこで、遠洋漁業のトロール船に乗り組みます。「小林多喜二の『蟹工船』ほどじゃないけれど、季節風の荒れ狂う東シナ海への出漁は命がけでした」(『歌、いとしきものよ』から)▼体が仕事に耐えられません。大病を患い、やがて歌謡詩の世界へ。その星野さんが、「ハッケヨイ待った!」という曲の詞を書いています。―強い横綱、大関も/たまにゃ負けます土がつく…▼星野さんについては、あらためてしのぶ機会があるかもしれません。亡くなった日、強い横綱・白鵬の連勝記録が途切れました。「これが負けか」と、悔しさをかみしめる白鵬関。双葉山の69連勝記録まで、あと6勝でした。気後れせず実力を発揮した、相手の稀勢の里の気迫が光りました▼技も人格もすぐれていたという伝説の横綱、双葉山。白鵬は、戸惑い悩むときもあったそうです。“記録に挑戦するのが自分でいいのだろうか”と。周りに「夢で双葉山と相撲を取った」と語るほど、大先輩に近づこうと努めていました▼まだ若い25歳です。歌の文句ではないけれど、「たまにゃ負けます」と気持ちを切り替え、再び不滅の記録をめざしてほしい。昨日は危なげなく勝ちました。新たな挑戦の始まりです。