2010年11月17日(水)「しんぶん赤旗」

主張

日航「整理解雇」

根拠のない首切り撤回せよ


 会社再建中の日本航空が、希望退職者が目標に達しなかったとして、パイロットと客室乗務員250人(休職者を含む)を「整理解雇」する方針を発表しました。

 「整理解雇」は労働者の意思を無視し、対象者を特定して一方的に指名解雇するものです。経営危機にたいして何の責任もない労働者に過酷な犠牲を押し付ける仕打ちは絶対に許されません。

「4要件」に反している

 企業が会社再建などを理由に「整理解雇」を実施する場合、最高裁などの判例で確立された「整理解雇の4要件」という厳しい条件を満たす必要があります。(1)解雇による人員削減がどうしても必要であること(2)希望退職や一時帰休など解雇回避のあらゆる努力がつくされたこと(3)解雇者の選定基準、人選が客観的、合理的であること(4)解雇手続きが妥当であること―です。

 日航の「整理解雇」は、250人も大量解雇する根拠がでたらめであることや、営業利益が計画を上回っていることなど、明らかに「4要件」に反しています。

 パイロットや客室乗務員が加入している日本航空乗員組合と日航キャビンクルーユニオンによると、希望退職者は会社本体で当初目標の1500人に対して1520人が応募し超過達成しています。

 また4〜9月の営業収益は1096億円になり、ことし2月段階での年度末の計画値250億円を実に800億円も上回りました。これは日航の稲盛会長が10月26日に記者会見して発表した数字です。

 これらの事実をみても、日航は「整理解雇」という非情な手段をとってまで人員削減しなければ、企業が存続できない状態ではありません。解雇は撤回すべきです。

 しかも労働者と家族の生活をこわす最悪の事態を回避するために、労働組合の側が、ヨーロッパなどで採用している「一時帰休」や「ワークシェアリング(仕事の分かち合い)」の検討を提案したことにたいして、会社側は受け入れを拒否しました。会社側には解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くすという姿勢がみられませんでした。

 「整理解雇」という強硬手段をとらなければ会社が再建できない理由、根拠はことごとく崩れています。にもかかわらず強行しようとするのは、会社の意に反する労働組合つぶし、活動家排除がねらいだといわなければなりません。

会社再建に逆行する

 日本航空の経営破たんの最大の原因は、政府の無責任な航空行政にあります。米国の要求を受け入れてジャンボ機を100機以上も購入し、買いすぎた新品を米国の砂漠に寝かせておいて批判を浴びたこともあります。また地方空港を乱造し、不採算路線の就航を強いるなど大きな負担を押し付けてきました。労働者には何の責任もありません。

 日本航空が、必要性も合理性もない「整理解雇」を強行するなら、労働者の側が争議権を行使し、裁判に訴えるなどあらゆる合法的手段で撤回を求めるのは当然です。日本航空は、会社再建に逆行する愚を犯すことなく、何よりも重要な航空の安全を最優先する見地に立って、「整理解雇」方針を撤回すべきです。





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