2010年11月16日(火)「しんぶん赤旗」

主張

7〜9月期GDP

古い戦略が家計を貧しくする


 7〜9月期の国内総生産(GDP)速報によると、前期と比べた実質成長率は0・9%増となりました。この伸びが1年間続くと仮定して計算した年率換算ではプラス3・9%となっています。

 輸出の伸びが大きく低下し、輸出から輸入を差し引いた「外需」は横ばいとなりました。他方で自動車の「エコカー補助金」の終了やたばこ増税を前にした駆け込み需要の発生、猛暑の消費刺激効果で「内需」が伸び、全体の成長率を押し上げました。

持続できない輸出頼み

 形の上では内需主導となりましたが、駆け込み需要などの特殊な要因が働いた結果です。海江田万里経済財政担当相も「一時的に民間消費が伸びたが、景気は足踏み状態にある」としています。

 むしろ、需要を先食いしてきた「エコカー補助金」が終わり、猛暑効果がなくなるために、今後は家計消費が一気に冷え込むことが懸念されています。

 欧米の景気回復が停滞し、アジア諸国では電気機器が在庫調整に入っています。円高が続けば、さらに輸出を圧迫します。輸出頼みの成長は持続できません。大企業と輸出応援の経済戦略を根本から見直す必要があります。

 2年前に米国発の経済危機が広がるまで日本の大企業は5年連続で過去最高益を更新し、20年前の「バブル」期を上回る利益を上げました。自公政権は法人税率引き下げのほか、研究開発減税の拡充など至れり尽くせりの対策で大企業に減税の大盤振る舞いをやってきました。

 しかし、賃金は増えるどころか民主党政権になっても減り続け、1997年と比べると年収は60万円以上も下がって「バブル」前の水準まで落ち込んでいます。日本経済も過去10年間にわたって成長を止めています。

 経済危機の中で政府は「エコカー補助金」や家電「エコポイント」を実施し、大手製造業は大幅に売り上げを伸ばしました。にもかかわらず、大手製造業は「非正規切り」「下請け切り」を強行し、内需を痛めつけてきました。

 いくらもうけても大企業は賃金や設備投資には回さず、余った資金をため込んでいます。「大企業を応援すれば経済が良くなり、やがて国民の暮らしも良くなる」という古い経済戦略は有効性のかけらさえ失っています。

賃金増やす経済政策へ

 日本経済が失速すればするほど財界は政府に応援策を要求します。最近も「日本経済の持続的な成長を実現するには、わが国の企業の国際競争力の強化が不可欠だ」(日本経団連の米倉弘昌会長)と大幅な法人税減税、やみくもな貿易自由化を求めています。財界の要求に民主党政権は「新成長戦略」で応えようとしています。

 金余りの大企業に減税しても役に立ちません。やみくもな貿易自由化で大企業の輸出が増えても農業や地域経済が壊され、賃金下落の圧力も高まって内需に打撃を与えます。内需が冷え込めば一段と輸出依存が強まり、ますます円高を招く悪循環に陥ります。

 雇用や中小企業、地域経済へのしわ寄せは大企業の経営にもマイナスです。賃金を増やし、中小企業を支え、地域経済を守って家計を温める経済政策への抜本転換が求められます。





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