2010年11月14日(日)「しんぶん赤旗」
日米首脳会談
「同盟深化」つまずきと執念
13日、横浜APEC(アジア太平洋経済協力会議)で行われた日米首脳会談は、国民的な批判・抵抗による「日米同盟の深化」のつまずきと同時に、それでもなお、日米同盟を「深化」させようとする日米双方の執念を印象づけました。
■宣言したが
昨年11月13日、東京で行われた鳩山由紀夫前首相とオバマ米大統領との会談は、日米安保条約改定50年となる今年に向けて「新しい協議のプロセス」を進めることで一致。(1)拡大抑止(2)軍事情報の保全(3)ミサイル防衛(4)宇宙の軍事利用―などを示し、「日米同盟の深化」を進めると宣言しました。オバマ大統領は、沖縄の米海兵隊普天間基地「移設」を、「迅速」に進めるよう要求していました。
その“成果”である新たな日米共同声明を発表する場として想定されていたのが、今回のAPECでした。
しかし、沖縄では普天間基地の県内「移設」反対が県民の総意となり、いかなる圧力によっても後戻りはできない地点まできました。鳩山前首相も、普天間「移設」の失敗などにより辞任に追い込まれました。
来年3月に期限が切れる米軍「思いやり予算」特別協定の延長についても、今回の会談で「基本的に一致した」(福山哲郎内閣官房副長官)ものの、財政悪化のなか米軍優遇の「思いやり予算」への国民的な批判は高まる一方です。
これらの結果、今回の首脳会談での共同宣言断念に追い込まれたのです。
■県民へ挑戦
しかし、菅直人首相とオバマ大統領は、来年春までに「日米同盟の深化・発展のための共同ビジョン」を打ち出すことで合意。また、普天間基地「移設」をふくむ沖縄での米軍再編について、菅首相が「(5月28日の)日米合意に基づいて行動する」と表明したことは、現在、普天間「移設」問題を最大争点とする沖縄県知事選をたたかっている県民への挑戦と言えます。
一度、失敗した「同盟深化」のプロセスを再開する上で強調されたのは、中国の存在です。菅首相は「日中・日ロで起こっている問題で(米国が)日本をサポートしてくれたことを力強く思う」と述べ、オバマ大統領は「中国は、国際社会の一員として国際的なルールの中で、適切な役割と言動が必要だ」と言及しています。
尖閣諸島問題での中国の対応を、日米同盟深化の口実にしようというのです。
しかし、尖閣問題の解決でもっとも重要なのは、日本による領有の正当性を国際世論の多数にする外交努力です。外交力の弱さを、日米同盟という軍事力でカバーする発想から脱却しなければ、いつまでも北東アジアの平和的環境をつくることはできません。(竹下岳)