2010年11月14日(日)「しんぶん赤旗」

主張

G20サミット

「成長戦略」の見直し迫る


 ソウルでの20カ国・地域(G20)首脳会議に引き続いて、横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれています。日本をはじめ米中韓ロなどの首脳は、2都市間を移動して両方に出席しています。

 「通貨安競争」に「貿易自由化」とテーマは違っても、議論の背景には、米国が「5年で輸出を倍増させる」(オバマ大統領)環境をつくろうとしていることがあります。問われているのは各国の「成長戦略」のあり方です。

混乱招く通貨安競争

 米国発の金融危機以来、米国をはじめ先進資本主義国の多くが不況にあえぎ、雇用不安を抱えています。一方で、中国をはじめとする新興諸国は高い成長を続けています。先進国から新興国へと、世界経済の主役の交代が鮮明です。

 米国は、中国が人民元をドルに連動させることで対米輸出を拡大していると非難し、中国に元切り上げを強く迫っています。同時に、ドル資金をじゃぶじゃぶに供給する異常な金融緩和によって、ドル切り下げをはかっています。円高に直面する日本も、異常な金融緩和策を拡大しています。

 「通貨安競争」が現実になっています。あふれたドル資金は新興国に流れ込んでバブルを引き起こし、混乱と反発を広げています。

 このなかでG20首脳会議は、「通貨安競争を回避する」と宣言しました。具体策として米国が推進した経常収支の参考指針づくりは、来年前半に先送りされましたが、各国の条件が違うなかでの数値設定は実情に合わず、困難は当然です。各国が協調して秩序だった政策をとる必要があると確認したことが重要です。

 金融緩和であふれたドル資金は投機に利用され、金や銅などの商品から大豆などの食料までが高騰しています。投機は世界経済を揺さぶり、とりわけ貧しい国々に食料危機など深刻な影響を及ぼします。G20宣言は直接には言及しなかったものの、実効ある投機規制につなげたいものです。

 G20首脳会議は2年前、金融危機を二度と起こさせないために開かれ、今回が5回目です。市場にまかせさえすればうまくいくという弱肉強食の新自由主義に代わって、各国の協調がはかられてきました。「対立」がとって代わるかにみえた今回も、協調が確認されたことが肝心です。

 これは輸出頼みの「成長戦略」に見直しを迫るものです。すべての国が貿易黒字を計上するのは不可能で、輸出頼み一本やりでは「貿易戦争」を引き起こしかねません。それを防ぐには、相互に利益となる貿易のあり方を協調してめざすしかありません。各国が内需を高めることも不可欠です。

内需拡大が不可欠

 APEC首脳会議は、9カ国が交渉中の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を軸に、アジア太平洋地域での自由貿易圏づくりを推進しています。米国は自由貿易圏づくりを主導することで、輸出を拡大しようとしています。

 菅直人首相も農業者らの反対をよそに、TPP参加に向けて足を踏み出しています。TPP参加は輸出大企業の利益をはかっても、日本農業と地域経済を破壊し、内需をさらに切り縮めることが確実です。こうした「成長戦略」こそ見直すべき時です。





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