2010年11月11日(木)「しんぶん赤旗」
「もんじゅ」炉内
3.3トン落下 引き抜けず
原研機構 12メートルの金属性パイプ
福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」で、8月に原子炉内に落下した装置が引き抜けない状態であることが明らかになりました。原研機構が9日、発表しました。
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もんじゅは今年5月、1995年に発生したナトリウム漏れ・火災事故以来14年5カ月ぶりに運転を再開。7月下旬までに今年度に予定されていた試験を終えました。
その後、燃料を交換する作業などを行い、8月26日に原子炉内に入れていた燃料交換用の「炉内中継装置」を引き揚げる作業中、同装置が原子炉内に落下しました。この装置は、長さが12メートルある金属性のパイプで、重さが約3・3トンあります。これまで、2回引き揚げを試みましたが失敗していました。
回収方法を検討するため、9日、原子炉内にカメラを入れて観察した結果、パイプの一部で通常は5〜7ミリしかないはずのすき間が14・5ミリに広がっていることを確認。原研機構はこの結果などから炉内中継装置になんらかの変形があると推定され、通常の方法では引き抜けないと判断したとしています。
もんじゅは来年度、出力を40%まで上げる試験を実施することになっています。炉内中継装置を原子炉内から回収しないと運転できないことから、試験の実施は遅れるとみられています。
解説
危険な運転計画中止を
「もんじゅ」は1980年代に建設が始まった老朽原発です。今年5月、14年5カ月ぶりに運転を再開する際には、設備の健全性などへの不安から“見切り発車”を危ぶむ声が多くの国民や専門家からあがっていました。
経済産業省原子力安全・保安院や国の原子力安全委員会は、設備の健全性は保たれているとして運転再開にお墨付きを与えました。しかし、運転再開直後から燃料の破損を検出する装置が壊れるなど、設備の不具合が次々明らかになりました。
不安は的中し、現実のものとなったにもかかわらず、原子力研究開発機構は運転を強行し続けました。「炉内中継装置」の落下は、こうした流れの中で起こったもので、たまたまでないことは明らかです。
先月行われた国の特別会計についての「事業仕分け」でもんじゅのこの事故が取り上げられたとき、原研機構の鈴木篤之理事長は、もんじゅが30年以上前に設計されたもので、トラブルは今後も起こりうると明言しました。
国民を危険にさらすもんじゅの運転計画はただちに中止するべきです。(間宮利夫)
高速増殖炉 プルトニウムを燃料に使う原発で、使用した以上のプルトニウムを生み出せるとして“夢の原子炉”とも呼ばれています。実用化までにはいくつかの開発段階があり、「もんじゅ」は2段階目にあたる原型炉に位置づけられています。冷却材に、水や空気とふれると激しく反応するナトリウムを使うことなど、技術的困難と経済性の問題から欧米各国は開発から撤退しています。