2010年11月5日(金)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 昨年夏、アメリカ東部サウスカロライナ州。共和党の集会で1人の男性が語り始めました。「政府は私のメディケアに手を出すな」▼「メディケア」は、アメリカの高齢者や障害者向けの医療保険です。保守派は、オバマ政権の当初の医療改革案に入っていた公的保険づくりを、「社会主義だ」といって攻撃しました▼しかし男性は、事実を知らずに発言していました。政府に乗っ取られると心配する自分のメディケアは、もともと政府の運営する公的保険なのに。茶会党(ティーパーティー)は、流言と誤解がまかり通る反「医療改革」運動の中で勢いづきました▼「政府は手を出すな」の“小さな政府”を唱え、進化論も否定する茶会党。1773年のボストン茶会事件を思い起こさせる名です。民衆が、イギリス船の茶箱を投げ捨て、独立革命へのろしをあげた茶会事件。しかし、自由の国への進歩を願った先人と違い、茶会党が投げ捨てるのは「進歩」です▼米議会の中間選挙で、茶会党の推す候補が共和党から続々と当選しました。「失業」が争点の選挙で、ちぐはぐな結果にみえます。茶会党が説くように、企業任せで政府の仕事を認めなければ、企業はもっと人を減らし、政府の対策も閉ざされます▼二大政党のもとで、経済社会が混迷し、人々のやり場のない怒りや失望があらぬ方へ漂流し破裂する。わが国も、人ごとではないでしょう。あの集会の男性は、茶会党がメディケアの廃止もめざしている事実を知っているのでしょうか。





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