2010年11月4日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 昨日は文化の日。東と西の知人から、時を同じくして同様の話を聞きました。おもしろい画家の絵をみた、と▼東は、宮城県美術館で特別展が開かれている長谷川りん二郎。1988年に84歳で亡くなった、北海道・函館生まれの画家です。図録に載る猫の絵には、見覚えがありました▼気持ちよさそうに眠るトラ猫。右側のひげがない…。モデルの猫タローは当初、“いい子”だったとか。やがて、どうしても同じ姿勢をとりません。季節が変わり、寒くなったのです。制作は中断です▼1年後、ほぼ仕上げましたが、ひげを描き忘れます。また1年後、タローはもう元の姿勢に戻れません。病気でした。3年後タローは死に、仕方なく想像で片方だけひげを描き加えます。描き忘れたのは、毛並みの美しさに熱中したからでした。「生命に充ち溢れた深い輝き、それが猫である」▼西は、福岡県立美術館に作品がある高島野十郎(やじゅうろう)です。福岡・久留米に生まれ、1975年に85歳で亡くなりました。知人によれば、「写実なのに異様な気配の絵」。燃えるローソク1本だけを描く作品に、「こんな絵、ほかに思いつかない」と驚いたそうです▼晩年、千葉の柏市にひっそりと住みました。ローソクを描いては「気に入らなければ火のたき付けに…」と周りに配るほど、画壇とは無縁でした。りん二郎も画壇とあまりかかわらず、二人は「孤高の画家」といわれ、脚光を浴びたのは近年です。しかし、「孤高」の割にどこか庶民的で目線の低そうな二人です。





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