2010年11月4日(木)「しんぶん赤旗」

主張

「思いやり」交渉

減額の“公約”投げ捨てたのか


 米軍「思いやり予算」の日米交渉で、「思いやり予算」の総額は減額ではなく、現状維持かそれ以上となる可能性が濃厚です。

 菅直人政権は日米交渉で減額をめざしてきたはずですが、北沢俊美防衛相は10月29日、「総額を極端に減らすというようなことは妥当性がない」とのべて、減額要求の方針をひっこめました。交渉方針の転換が、アメリカの要求に屈したものであることは明白です。

米側要求に道理はない

 「思いやり予算」は米軍地位協定にも根拠がなく、本来全廃すべきものです。それなのに減額さえ要求しないのでは、ムダを削るという政府の約束にも反します。

 クリントン米国務長官は10月29日の日米外相会談で、「思いやり予算」の日米交渉が「積極的・建設的な状況で進んでいる」と評価しました。減額に反対し増額を迫るアメリカの対日圧力に屈服して、日本政府が「総額を減らさない」方針を鮮明にしたからです。この方針転換は民主党政権の約束をほごにするものです。

 民主党政権発足直後の国会(2009年10月衆院本会議)で鳩山由紀夫首相は、日本共産党の志位和夫委員長が「日米地位協定上も支払う義務のない『思いやり予算』に切り込む意思はあるのか」とただしたのに対して、「包括的な見直しに取り組んで、そのことにより国民の理解を得」ると約束しました。菅首相も「財政的にも大変苦しい中であり、納税者の理解が重要だ」とのべていました(8月3日衆院予算委員会、日本共産党の笠井亮議員への答弁)。

 国会での約束は守られるべきです。「納税者の理解が重要」というなら、大幅減額を正面にすえてアメリカと一歩も引かない交渉をするのが筋です。菅政権が減額要求から「総額を減らさない」という方針に転換したのは、ムダをなくせという国民の願いに背を向けるものであるのは明白です。

 「思いやり予算」の対象となっている戦闘関連や米軍家族住宅などの施設費はもちろん、日本人基地従業員の給与や光熱水料、米軍の訓練費は、米軍地位協定上米軍が負担すべきものです。日本が負担し続けるなど許されません。

 見過ごせないのは米政府が、さらに対象を拡大し、在日米軍基地とグアムの基地に「再生可能エネルギーの技術を導入」する費用も日本に負担させようとしていることです。これはどの施設でも30%以上エネルギー効率を高くするという2005年の米エネルギー政策法にもとづく措置で、日本が負担するいわれのないものです。しかし菅政権はこれを「取り入れる」(北沢防衛相)といっています。これでは米財政悪化の米軍への影響を日本の負担拡大で乗り切ろうとする米政府の思うつぼです。

国民生活予算の財源に

 クリントン国務長官は日米外相会談で「思いやり予算」を「東アジアの安定と安全保障を維持するための主要な貢献策」とのべました。「思いやり予算」という呼び名をやめさせ、「思いやり予算」の増額・拡大への道をつくっておくのが狙いです。「思いやり予算」を続ければ米軍基地をなくせないのは明らかです。

 「思いやり予算」をやめ国民生活に回すのが国民の願いです。政府は不当な米政府の増額・拡大の要求をきっぱり拒否すべきです。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp