2010年11月3日(水)「しんぶん赤旗」
主張
文化の日
文化予算拡充へ力を合わせて
きょうは文化の日です。コンサートや演劇など生の舞台を見に行ったり、映画館に足を運んだりする方も少なくないでしょう。
条件整備は政治の責務
「文化芸術とはその国の目に見えない財産だと思います。どんなに小さな落語会、音楽会、お芝居でも、そこにいるお客様の心を潤しているに違いありません」と、落語家の桂歌丸さんは語ります。
芸術・文化は、心豊かな生活と社会の活力のために必要不可欠です。優れた芸術作品は人びとに生きる希望と勇気を与え、人間や社会を深く見つめる機会を提供してくれます。文化をつくり楽しむことは国民の権利であり、その条件を整えることは政治の責務です。
ところが日本では、長年の自民党政治のもとで貧困な文化行政が続いてきました。文化庁予算は1000億円余で、国家予算に占める文化予算の割合は0・11%(2010年)にすぎません。フランスが国家予算の0・81%、お隣の韓国が0・73%(09年)を確保し、芸術・文化に手厚い支援をしているのと対照的です。
民主党政権はこうした状況を改めるどころか、昨年来の「事業仕分け」に見られるように、短期的な効率主義で芸術団体への助成を縮減しようとしてきました。
これに対して、広範な芸術団体で構成する日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が「文化予算の割合を0・5%に増やしてください」という要求を掲げ、署名運動にとりくんでいます。国民の実演芸術創造と享受の機会の拡充や、芸術組織が専門性を発揮して持続的に発展できる新たな助成制度などを求めています。芸団協がこうした署名にとりくむのは初めてです。
10月17日には、能楽師の野村萬さんやピアニストの中村紘子さんらが街頭で署名を呼びかけ、大きな反響が寄せられました。文化の日を中心に、全国のホールや寄席など100カ所以上でもいっせいに協力を呼びかけています。
「近年ほど厳しい社会情勢を感じることはありません。動けば出費が重なる。じっとして居れば芸が淀(よど)む、発表の場がほしい!」(澤孝子・日本浪曲協会会長)
運動にとりくむ芸術団体・芸術家の声はどれも切実です。それは何より広く国民に舞台芸術や芸能を届け、次の世代に継承したいという強い思いからです。
背景には経済危機の深刻化もあります。「安価なホールは激減のありさま」という声に象徴されるように、国・地方自治体の文化予算削減や指定管理者制度などが、それに追い打ちをかけています。
日本共産党の宮本岳志議員は、10月27日の衆院文部科学委員会で、文化予算の抜本拡充を政府に強く求めました。高木文科相も「関係者の熱い思いを重く受けとめる」「短期的な経済的な効率主義を一律に求めることではない」と答弁せざるをえませんでした。
財源は生みだせる
財政危機で文化予算を特別扱いできないという議論もあります。しかし、文化庁の芸術文化振興費は360億円余とあまりに少なすぎます。米軍への「思いやり予算」や政党助成金を削れば、文化予算を増やす財源は生みだせます。
要は政治の姿勢を変えることです。日本共産党は、芸術家の「もっと文化を」の声と力をあわせ、政府に迫っていく決意です。
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