2010年11月1日(月)「しんぶん赤旗」
特別会計「仕分け」
“役人と対決”を演出
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政府の行政刷新会議は30日に4日間の特別会計「仕分け」を終えました。民主党の政権公約だった「仕分け」による財源のねん出については、「今回の目的はそんなことではない」(蓮舫行政刷新相)と放棄。「官僚・省庁=悪」の構図を宣伝するパフォーマンスを演じますが、政権党の民主党が自分で自分の政策をたたく矛盾も表れています。
公約はどこに
○…民主党は2009年政策インデックスで「コメの備蓄300万トン体制」を掲げています。しかし、食料安定供給特別会計の「仕分け」では「1万トンの備蓄経費に1億円かかっている。赤字を垂れ流していいのか」と、現在の国産米備蓄100万トンを問題視。蓮舫氏も「100万トンの是非は、もう一回議論したほうがいい」と発言しました。
筒井信隆農林水産副大臣は「300万トンが民主党の公約だ」と困惑顔で反論。政権公約の軽さが浮き彫りになりました。
詰問した後に
○…“役人たたき”の演出があらわだったのはスーパー堤防。民主党議員の仕分け人が「完成に400年もかかる」と同事業のムダを追及し、国土交通省の官僚をさんざん詰問した後で、ころ合いを見て民主党議員である津川祥吾国交省政務官が「この事業は優先順位が低いので見直している」と答えて議論は終わりました。省内で見直しを始めていると最初に政務官が答えれば、すぐに終わった話。ムダな時間を費やしました。
スーパー堤防はやめるのが当然で、政権党なのだから仕分けを待たずにすぐできるのです。地元江戸川区で住民運動が起こっているのだからなおさらです。
廃止決めたが
○…国からの地方交付税交付金などをプールし自治体に配分する交付税特会では、33・6兆円の借金が問題にされ、民主党の仕分け人は「どこに問題があるのか」「責任はだれが取るのか」と総務省官僚をただしました。
地方にムダな公共事業を押し付け借金をつくったのは自民党政治の責任です。仕分けで総務省の官僚を問い詰めても解決方向はでてきません。
仕分けられる側に立った総務省の逢坂誠二政務官は「(特会の借金は)財政全体の問題。交付税だけが悪いという話ではない」と反論、「(仕分けの)2時間は(仕分け人の)勉強会」と怒りをあらわにしました。
仕分け人多数が「制度廃止」としたものの、特会を廃止しても借金が一般会計に移るだけなので、結局、「真意は区分経理の廃止ではない」として特会存続になりました。
法的根拠なし
○…今回の仕分けには、省庁側として民主党政権の副大臣や政務官が出席しました。これまでは旧政権や独立行政法人など、いわば“外部”の仕事の仕分けが対象。今後は自分たちのやってきた施策が対象になります。「仕分け人」対省庁の対決をハデに演出して政権浮揚につなげる手法にも矛盾が表れています。
行政刷新会議の仕分けには法的な根拠がありません。仕分け人も恣意(しい)的に選ばれています。行政のムダをチェックする役割を負う国会でこそ徹底的に審議すべきです。(前野哲朗、西沢亨子)