2010年11月1日(月)「しんぶん赤旗」
主張
米軍機の騒音被害
「負担軽減」通用しない異常
菅直人政権は、沖縄県民がこぞって拒否している米海兵隊普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への「移設」をおしつけるために、沖縄での米軍による負担の「軽減」をもちだしています。政府の「沖縄政策協議会」に「沖縄振興部会」と「基地負担軽減部会」を新設したのもその一つですが、もともと異常に集中した基地負担の軽減を新基地建設の条件としていることの不当性に加え、「負担軽減」といいながら政府が何の具体策も示さないことに県民のいらだちはつのるばかりです。
戦闘機の訓練で激増
国土面積のわずか0・6%にすぎない沖縄に、米軍専用基地の75%が集中していることによる基地被害は、安全や米軍犯罪など数多くありますが、米軍機による異常な騒音もその一つです。普天間基地や嘉手納基地の米軍機による爆音被害はきわめて深刻であり、一刻も早い対策が不可欠です。
とりわけ普天間基地の騒音は重大です。米軍は嘉手納基地の2本の滑走路を再来年3月まで順次改修するという理由で、同基地所属の戦闘機を普天間基地に飛来させており、それ以降普天間基地周辺の騒音はとくにひどい状況になっています。一時的な「目的地外着陸(ダイバート)」というふれこみですが、普天間基地を嘉手納基地と同じように使っているのが実態で、「負担軽減」とは文字通り逆行する事態です。
戦闘機は飛来するたびに120デシベル前後のごう音をまきちらすため、住民の多くがこれまで以上に苦しんでいます。沖縄県議会や那覇市議会はダイバートに抗議し、中止を求める意見書と決議を全会一致で可決しています。
問題は菅政権がこの異常な事態をやめさせる意思をまったく持ち合わせていないということです。日本共産党の志位和夫委員長が、負担軽減をいうなら「中止するようアメリカにきっぱりと要求すべきだ」(10月7日衆院本会議)と迫ったのに、菅首相は「改修工事」だからという理由でダイバートを容認しました。前原誠司外相も「一時的」というだけです(27日衆院外務委員会、日本共産党の笠井亮議員への答弁)。
負担軽減といいながらこの問題さえ処理しないのでは、県民の理解がえられないのは当然です。
もともと普天間基地は「世界一危険」で、周辺住民の命を脅かし、騒音被害を押し付けています。「小さい子が『怖い』と耳を押さえながら泣いている」「いらいらして生きた心地がしない」とか、「午前0時直前なのにうるさくて睡眠ができない」などの訴えが連日基地のある宜野湾市役所に届いています。
普天間基地なくしてこそ
普天間基地がある限り宜野湾市民の苦しみはなくなりません。普天間基地を名護市辺野古に移せば名護市民が苦しむだけです。県民が米軍の犠牲になるいわれはありません。県民に基地の痛みをたらい回しにする政府のやり方に道理がないのは明らかです。沖縄県民の負担軽減のために、政府は騒音被害をつくりだしている米軍機の飛行中止と基地そのものの撤去をアメリカに要求すべきです。
普天間基地の辺野古移設を決めた「日米合意」を白紙撤回し、県民の総意にそって普天間基地の無条件返還で本腰を入れた交渉にふみだすことがいよいよ重要です。
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