2010年10月30日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 「ウチは即戦力が欲しかった」「ゆっくり育てている余裕はない」。プロ野球のドラフト(新人選び)会議をめぐる、監督や球団幹部の発言です▼たしかに、大学生に関心が集中し、有望な高校生が選からもれました。早大の斎藤投手や大石投手など、期待の大学生が多かった事情だけではなさそうです。初めから大学生と社会人にねらいを定め、高校生を一人も指名しなかった球団もあります▼NHKで先日みた、報道番組を思い出しました。ところは中国の上海。大学出の若者が、発展いちじるしい上海で職を探そうと、全国から続々やってきます。就活は長期戦。もっぱら彼らが寝泊まりする、賃貸住宅もできています▼ぞろぞろと集まって暮らす彼らは、蟻(あり)族とよばれています。しかし、就職できない人が多い。企業が断る理由は、たいてい“あなたは即戦力にならない”です。やがて、宿所が上海万博のために用立てられると決まり、住まいも失った彼らはどこへ…▼日本でも、「即戦力」が幅をきかせています。企業が、「即戦力だ」といって、使い捨てやすい派遣労働者をひどい条件のまま使い回しする。「即戦力を」といって、高校生を雇わず、大学生に就職の準備や就活を早めさせる▼中国はいざ知らず、わが国の場合、大企業には都合がいいでしょうが、国にとっては損失です。意欲と力を秘めた人がいても発揮する場を奪われ、将来の仕事や国づくりに生かせる学業がままならないうちに社会に出る学生もふえるのですから。





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