2010年10月30日(土)「しんぶん赤旗」

主張

補正予算案

内需底上げの戦略がなければ


 政府は29日、5兆円規模の補正予算案を国会に提出しました。8日に決めた「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を実施するための措置だとしています。

 分野別に見ると「雇用・人材育成」に3199億円、「新成長戦略の推進・加速」に3369億円を計上しました。「子育て、医療・介護・福祉」1兆1239億円、「地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等」に3兆706億円などとなっています。

大企業の応援策が中心

 経済対策としては自民党政権のときと変わらない従来型の施策が並んでいます。

 新成長戦略の推進・加速では家電エコポイントに777億円、イノベーション(技術革新)拠点立地支援(303億円)の名で大企業の設備投資に補助金を出します。さらに、大企業の海外大型買収に100億円を出資するなど大企業応援策が中心です。3776億円の社会資本整備では「国土ミッシングリンク(未整備区間)の解消」を名目にした高速道路建設を柱に、国際港湾・空港など大型公共事業を盛り込んでいます。

 雇用や子育てなど、国民の暮らしにかかわる分野も入ってはいますが、国民の切実な声に応えるには不十分な内容や程遠い中身のものが目立ちます。

 「新卒者就活応援プログラム」の実施に500億円を計上し、3年以内の既卒者を正規雇用した企業に6カ月後に100万円を支給するなどします。「超氷河期」といわれる学生の就職難に真剣に取り組むなら、巨額の利益をため込みながら人件費削減に執着する大企業の姿勢を変える必要があります。日本共産党の志位和夫委員長が7日の衆院代表質問で求めたように、大学、経済界、政府の3者による協議を開始するなど政府は直ちに腰を上げるべきです。

 子育てでは「安心こども基金」に1000億円を拠出し、保育所整備を実施するとしています。しかし民主党政権の保育政策は保育の最低基準を引き下げて子どもを詰め込み、市町村の保育実施義務も撤廃して保育への公的責任を大きく後退させる方向です。保育の安全を脅かすやり方では安心して子どもを託せません。

 何より、民主党政権の経済対策には、痛めつけられてきた家計、内需を底上げするまともな戦略がありません。

家計を土台から温める

 日本経済は長期にわたって家計、内需が低迷し、国内総生産が10年前よりも落ち込むという異常事態に陥っています。その大もとにあるのは、世界でも異例の“賃金下落の常態化”です。

 国税庁の調査によると1998年以降、延々と民間給与の下落傾向が続いています。この間の給与所得者数は横ばいなのに給与総額は28・6兆円も減り、1人当たりの平均年収は61万円もの減少となりました。他方で大企業は244兆円もの貯蓄(内部留保)をため込み、使い道に窮しています。

 労働者派遣法の抜本改正や有期雇用の乱用を防ぐ規制、正社員との均等待遇、中小企業と大企業との公正な取引ルールの確立などを通じて、大企業の過剰な貯蓄を社会に循環させる経済構造に転換していくことが求められます。

 社会保障の拡充や農林漁業の振興とあわせて、家計・内需を土台から温める戦略が必要です。





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