2010年10月27日(水)「しんぶん赤旗」

JAL監視ファイル裁判 あす判決

会社側反省なく 再生は事件解決から

“人権侵害なくすまで”客室乗務員ら訴え


 「個人情報を集めた監視ファイルで人権が侵害された」として、日本航空の客室乗務員ら192人が訴えている裁判が28日、東京地裁で判決を迎えます。原告は、真相究明と謝罪、再発防止などを求めています。(田代正則)


 JAL監視ファイル事件とは、日航で働く客室乗務員のほぼ全員と退職者を含む9862人もの個人データが、違法に収集され、JAL労組(JALFIO=ジャルフィオ、連合・航空連合加盟)が保有していた事件です。2007年2月、週刊誌のスクープで発覚しました。

 データは、住所、氏名などの基本情報にとどまらず、思想・信条やシングルマザー、離婚歴などの家庭状況、病歴、容姿など158項目にもおよび、備考欄には「悪党」「精神異常」「流産」など悪意ある書き込みもありました。

知りえない情報

 契約制客室乗務員時代の評価など、会社が情報提供しなければ、知りえない情報も多く含まれていました。信頼していた上司や仲間に話した内容が筒抜けとなっていたことで、多くの客室乗務員が傷つきました。

 「客室乗務員の仕事は、接客サービスだけではありません。非常口ごとに担当者が決められ、保安業務をにないます。客室で起こるさまざまな事態に一丸となって対応するチームワークが何より大切なんです」と原告団の飯田幸子事務局長。

 原告たちは日本航空とJAL労組を相手どり、人権侵害ならびに安全運航に不可欠のチームワークを破壊・分断する行為への謝罪と再発防止などを求め、07年11月、提訴しました。

 08年2月の第1回口頭弁論で、会社は「訴えられた事実は無根」としたうえで、損害賠償(約4800万円)にだけ応じ、真相を隠したまま幕引きをはかりました。

 しかし、JAL労組との裁判が続く中で、客室業務部長などの証人尋問を実現させ、会社とJAL労組が一体となって人権侵害を行っていたことを強く疑わせる事実が明らかになっていきました。

 社内調査の報告は、“一部社員が個人判断で情報漏えいさせた”と言い訳していますが、原告は、一部社員ではこれほど大がかりなデータを集めることはできない、と主張しています。担当者が代わっても数年にわたって情報提供されていました。会社管理職とJAL労組が定期的に情報交換していました。

組合脱退工作に

 ファイルが、日本航空キャビンクルーユニオン(CCU、航空連加盟)の組合員に対する組合脱退工作に使われていたことを事実上認めるような証言も出されました。経営方針に対し、まじめに意見をいう労働者と労働組合を攻撃対象としていました。

 会社は現在、ベテランや「病欠日数」を基準とした人員削減・リストラ対象者を乗務から排除して面談をかさね、退職を強要しています。面談では、「整理解雇の可能性もあります」「そういう体では、もう飛べないでしょう」などと脅しといえるやり方で退職を迫っています。監視ファイル事件の人権侵害を反省しているとは思えないやり方です。

 飯田さんが語ります。

 「現場では、マニュアルで伝えきれない経験をベテランから若い世代に引き継いできました。『日航に乗ってよかったね』と言われるサービスを提供しようと、私たちは誇りをもって働いています。日航の再生は、監視ファイル事件の解決から始まると、思いを強くしています」





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