2010年10月26日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
各地で歓声があがるスポーツの秋。イベントや大会も目白押しですが、先週末、2人の女性アスリートの姿が目にとまりました▼フィギュアスケートの浅田真央さん。得意だったジャンプを何度も失敗、伏し目がちでうつろな表情も痛々しい。2月のバンクーバー五輪後、ジャンプを一からつくり直している最中での苦闘です▼以前は、あんなにぴょんぴょんと跳んでいたのに。そう考えるところが素人か。専門家がいうには、彼女ほどの選手でも、積み上げてきたことをリセットしてまた仕上げる作業は、とても難しく、時間もかかる▼担当コーチは「心理的なものもある」。自信や情熱を失ってしまうことが、なによりもこわい。ここはあせらず、じっくりと。本人も「いまの気持ちは、点数や順位よりも自分の滑りをすること」▼もう一人は、約2年半ぶりにレースに戻ってきた野口みずきさん。こちらは、涙の復帰でした。連覇がかかった北京五輪の直前に、左足付け根の故障で、まさかの欠場。その後もケガに苦しみつづけ、一時は引退を考えたことも。しかし、手ごたえの走りに「まだまだ、行けるぞと思った」▼どんなトップ選手にも、スランプや故障はつきもの。とくに女性選手の場合、身体や体調の変化が動きを微妙に狂わすことがあります。ところが、日本では女性のスポーツ指導者が極端に少ない。奨励する立場のオリンピック委員会(JOC)でさえ、役員理事27人中2人だけ。日本スポーツ界の待ったなしの課題でしょう。