2010年10月25日(月)「しんぶん赤旗」
主張
参院憲法審査会規程
改憲の条件づくりに道理ない
民主党と自民党が中心になって、参院に憲法審査会を設置するための委員数や運営についての規程づくりの動きが急浮上しています。
憲法審査会は、改憲手続き法にもとづき、最終的には国民の投票で決まる改憲の原案を審議する権限を持ちます。国民は改憲を求めておらず、憲法審査会の規程がなくても、なんの不利益も受けていません。改憲の条件づくりのためだけに憲法審査会の規程をつくろうというのは、文字通り、国民の意思に背くものです。
「立法不作為」の欺まん
民主党と自民党の参院国対委員長は、今国会中にも参院憲法審査会の規程を制定することで合意したと報じられています。規程づくりを推進する最大の理由とされているのが、改憲手続き法ができたのに憲法審査会のための規程がないのは、立法府の怠慢だという「立法不作為」論です。
これは、憲法には改正の規定があるのにその手続きを定めた法律がないのは「立法不作為」だといって、3年前の自公政権時代にしゃにむに改憲手続き法(国民投票法)の制定を推し進めたときとまったく同じ理屈です。
憲法ができてから改憲手続き法がつくられるまで60年、手続き法がなくてもなんの問題もなかったのは国民が改憲を望まず、改憲が実際の政治日程にのぼらなかったからです。改憲手続き法ができたあとも事態は同じです。
改憲手続き法は衆参に憲法審査会を設置し、改憲の原案を審議することを定めていますが、実際には衆院では昨年運営のための規程がつくられたものの参院ではつくられず、衆院でも参院でも審査会は一度も開かれていません。それでなんの不都合もないのに、わざわざ「立法不作為」論を持ち出して、参院でも規程をつくる必要はさらさらありません。
もともと自民党と公明党が改憲手続き法の制定を強行したのは、みずからの任期中に改憲すると公言した安倍晋三首相のもとで、そのスケジュールを進めるためです。改憲手続き法は内容も問題の多い法律です。国民が望んでもいないのに改憲の野望のためだけに改憲手続き法の制定を強行したのは、日本の憲政史上に重大な汚点を残した暴挙です。
改憲がどれほど国民の意思とかけ離れたものだったかは、実際にはそれ以降も「憲法9条を守れ」との声が強まりこそすれ、改憲の機運が強まることがなかったことを見ても明らかです。改憲手続き法にもとづき審査会の規程をつくるのではなく、手続き法そのものを廃止することこそ、国民の意思にこたえるものです。
民主・自民合作の危険
民主党は改憲手続き法の制定にあたって、採決では反対しましたが、直前まで自民党と協力して制定を進めてきました。衆院での憲法審査会の規程づくりにも、採決では反対しましたが、制定に反対だとは主張しませんでした。
今回参院での規程づくりでは、民主党は最初から自民党に同調しています。民・自「合作」の改憲の条件づくりの危険は軽視できません。
憲法を守り生かす課題はいよいよ重要です。国民の願いに反した改憲のための策動を許さず、憲法を守る世論と運動を大きくしていくことがいまこそ重要です。
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