2010年10月21日(木)「しんぶん赤旗」

主張

景気判断引き下げ

悪循環断ち切る政策転換を


 政府は19日の月例経済報告で、景気判断を前月の「持ち直し」から「足踏み状態」へと引き下げました。

 厳しい雇用情勢が続いて内需が低迷しているもとで、海外経済の回復の鈍化と円高で輸出が弱まってきています。景気判断の引き下げは、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破たんから連鎖的に景気が悪化していた昨年2月以来、1年8カ月ぶりです。

「企業収益」改善しても

 月例経済報告は総合的な景気判断を引き下げる一方で、一部の分野では「改善している」という判断を維持しています。「企業収益」と「企業の業況判断」です。

 大手製造業の収益の推移をグラフに描くと、リーマン・ショックから「V字」形で回復しています。今年度の1年間の見通しでも、9月の日銀短観によると、大企業は円高にもかかわらず増収増益を見込んでいます。

 大企業の「V字回復」は大量の「派遣・期間工切り」、正社員へのリストラと過労の押し付け、下請け単価たたきで利益を押し上げた結果です。大企業の採用抑制で新卒就職難も「超氷河期」といわれるほど深刻になっています。

 経済危機の打撃を雇用と中小企業に転嫁し、家計を冷え込ませてきた大企業の行動が内需をいっそう低迷させ、海外市場に頼る傾向を一段と強めています。円高の背景には、アメリカの急激な金融緩和を通じたドル安政策の影響とともに、根本には日本経済が過去にも増して輸出依存の成長路線に陥っていることがあります。

 大企業が国際競争力強化の名目で国民と国内経済に犠牲を強いて果てしないコスト削減を追求し、輸出を増やして円高を招く―。犠牲の転嫁で大企業は利益を増やし、貯蓄をため込んできたけれども、国民の暮らしは貧しくなり日本経済の成長も止まってしまうという悪循環―。民主党政権は、景気判断の引き下げに追い込まれた原因を直視すべきです。

 菅直人政権は発足した時にも内閣改造の時にも、真っ先に財界総本山の日本経団連を表敬訪問しました。こんな政権の姿勢に乗じて経団連は身勝手な要求をエスカレートさせています。

 18日に経団連が発表した経済政策の提言は言いたい放題です。政府に法人税の大幅減税や労働規制の緩和を求めるとともに、企業負担を逃れるために地球温暖化対策にブレーキをかけるよう要求し、証券優遇税制を続け、研究開発減税を強化する一方で消費税は「少なくとも10%まで早期に引き上げるべきである」としています。提言を政府に提出した経団連幹部は「社会保険料も含めた公的負担を軽減してほしい」とまで要求しました。

暮らし最優先の道へ

 悪循環の繰り返しは財界だけの責任ではありません。いま民主党政権が掲げている「新成長戦略」そのものが、日本経団連の要求をほとんど受け入れた内容になっています。

 求められるのは労働者派遣法の抜本改正や大企業と中小企業との公正な取引ルールの確立、社会保障の拡充を通じて暮らし最優先の経済発展をめざす道に転換することです。そうしてこそ、家計と内需を落ち込ませて企業の投資や雇用もさらに低迷させる悪循環を断ち切ることができます。





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