2010年10月19日(火)「しんぶん赤旗」
主張
「追い出し屋」規制
居住と生存守るよりよい法を
世に「追い出し屋」と呼ばれる人たちがいます。低所得者向けの賃貸住宅で家賃の滞納が起きると、鍵を交換して部屋に入れなくしたり、室内の私物を無断で撤去したり、法外な違約金を請求したりと、違法な実力行使で「追い出し」をはかる「貧困ビジネス」です。
被害のあまりの深刻さから、いま衆院では「追い出し屋規制法案」が審議されています。しかし、現在の法案には、住宅に困っている人たちを新たに民間賃貸住宅市場から締め出しかねない大きな問題が含まれています。家賃滞納情報をデータベース化する事業を容認している問題です。
「住まいの貧困」食い物に
「追い出し屋」が隆盛をきわめるようになったのは、貧困と格差の拡大が無視できない社会問題としてクローズアップされた2008年前後からです。
敷金・礼金・仲介手数料といった初期費用が必要のないことを売り物にする「ゼロゼロ物件」、地方出身者など連帯保証人を確保することが不可能な人に有償で保証をする「家賃保証会社」が次々と営業を広げ、家賃滞納が発生すると、鍵の交換、家財道具の無断持ち出し、深夜や早朝の督促や威圧的な張り紙など、追い立て行為をおこなっていったのです。
こうした行為は窃盗罪や住居侵入罪、器物損壊罪など刑法上は明らかな違法行為ですが、居住者の法的無知に付け込み、ほとんどが泣き寝入りの状態でした。その背景には、賃貸住宅の仲介・あっせん業者には宅地建物取引業法による法的しばりがあるのに、賃貸事業や賃貸管理業に属する「追い出し屋」を取り締まる業法が何も無かったという問題がありました。
今回の「追い出し屋」規制法はまさにそこに的を絞って、追い出し行為を、犯罪行為であり、処罰の対象であるとする新法をつくることで、大きな前進といえます。
同時に法案は、家賃などの滞納者のデータベース化と保証業者への情報提供を業として行うことを登録制で認めています。これは、低所得者や住宅困窮者など社会的弱者である賃借人が、一度でも滞納すると、住宅を借りるうえで不利な扱いを受けることになります。
経済の激変で、収入が一気に2分の1、4分の1に激減するなどということも珍しくない今日です。やむなく家賃を滞納し、より安価なアパートに移ろうとしたときに、このデータベースで「あなたは滞納歴があるから貸せません」とされ、必ずしも悪質ではない家賃不払いの履歴が、居住の権利を奪うことにもなりかねません。
日本弁護士連合会は会長声明で「入居差別や他のデータとの照合による架空請求、ヤミ金等の悪徳業者に転売されることによる悪用等が懸念される」と指摘しています。この法案の欠陥であり、修正が不可欠です。
「住まいは人権」の実現を
滞納データベース問題と合わせ、「賃借人、同居人が同意すれば家財の持ち出しができる」とした条項も追い出しを続ける「抜け道」になりかねず削除が必要です。日本共産党はこの点についても強く修正を求めています。
「住まいは人権」、健康で文化的な生活を営む土台です。それをむしばむ「貧困ビジネス」を一掃するために、居住と人権を守るよりよい法律を実現すべきです。