2010年10月18日(月)「しんぶん赤旗」

羽田国際化 騒音は 大気汚染は

滑走路4本・24時間運用


 東京・羽田空港の4本目の滑走路の供用が21日、開始されます。国際定期便が就航し、24時間運用の空港へと変わります。深夜・早朝飛行時間帯が設けられ、年間の発着回数が大幅に増加します。もっぱらハブ(中枢核)空港化、利便性向上が宣伝されていますが、今ある騒音問題に加えて「深夜・早朝便の騒音が増えて大変になるのでは」と周辺住民に不安が広がっています。(竹田捷英)


深夜早朝帯に年間4万回発着

首長も「騒音懸念残る」

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(写真)増築でロビーが広くなり13日にオープンした羽田空港の第2旅客ターミナルビル

 羽田空港は現在のABC3本の滑走路に加え4本目のD滑走路が完成しました(図1)。21日から供用を開始し、31日からは計画分を含め世界17都市との国際定期便が就航します。

 国際定期便の就航による深夜・早朝便が増加するため、昼間時間帯(午前6時から午後11時まで)と深夜・早朝時間帯(午後11時から翌朝午前6時まで)を設け、それぞれに飛行ルートを設定。深夜・早朝便は東京湾内を飛行するルートを予定しています。(図2)

 年間の発着回数は現行の30万回から1・5倍の最大45万回に。1日平均の発着回数は、ほぼ1200回の過密空港になります。深夜・早朝時間帯の発着回数は年間4万回、1日当たり110回にもなります。

 24時間航空機が飛び回る事態が起きるにもかかわらず、周辺住民や自治体に示されているのはおもに飛行ルートと騒音予測分布の図面だけ。周辺住民の不安は大きく、千葉県浦安市は市長名で「航空機騒音に対する懸念は実際に飛行するまで完全に払しょくできない」として国に対策を求めています。東京都大田区も同様の要請を国に対してしています。

図
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夜間は海上を飛ぶというが

陸側ルート拡大の歴史

 羽田空港の騒音問題は解決されないまま国際化が進められようとしています。

 現在の羽田空港は、航空機騒音が大きな問題になり、その改善と航空需要の増大にこたえるためとして、旧空港の沖合に移転・拡張して完成したものです。さらにD滑走路をつくる再拡張工事がすすめられてきました。騒音軽減のため、航空機は海側に向いて離陸していました。

 ところが需要の増加を背景に2000年から、陸側への飛行が実施されました。午前7時からの1時間に5便、東京都大田区上空を低空で飛ぶルートです。(北風離陸時)

 加えて08年9月からは米軍横田基地の空域削減にともなう航路変更によって1日100便、大田区上空を西へ向かう便が通過するようになりました。「西行きルート」(福岡、長崎、広島、山陰方面)とよばれています。

 いずれも通過する地域住民からは、「通過時にテレビの音が聞えなくなる」「だんらんの時間も騒音が気になりゆっくり休めない」「静かな住宅地だったのに環境が変わってしまった」と悲痛な声があがっています。

 D滑走路が運用される21日以後も若干の減便があるものの、いずれのルートも残されることになりました。

 西向きルート下の高山義男さん(65)=仮名=は「騒音問題を解決しないままの“見切り発進”ではないか。もっと高度を上げ、飛行便数を減らして騒音を軽減すべきだ」と強調します。

予想される交通量増大

排ガス汚染は今も深刻

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(写真)離着陸機でにぎわう羽田空港

 羽田空港の大幅増便に伴って環状8号線、産業道路など大田区内の道路を通過するバス、タクシー、トラックなど交通量の増大が予想されています。車の排気ガスによる大気汚染悪化が心配されています。

 同区内で30年にわたって1000カ所のNO2簡易測定をしている大気汚染測定運動大田実行委員会の調査結果は現在でも汚染の深刻な状況を指摘します。

 同実行委員会の藤田敏夫代表委員は「区内には現状でも環境基準相当値を超える数値を示す個所があります。区内の大気汚染は改善されていません。大気汚染公害患者と認定されたぜんそく患者は6400人を超え増加傾向にあります」とのべ、さらに次のように指摘します。

 「計測では区内東部の空港に近い地点の汚染が目立ちます。自動車排ガスに加え、空港を飛び立つジャンボ機などの排ガスが加わっていると考えられます。交通量と発着機の増大に伴って被害の拡大が心配です」


日本共産党は考えます

住民の声を聞き対策を

 当初のルートにあった航空機の市上空通過を撤回させるため国に働きかけるなど奮闘してきた日本共産党の井原めぐみ千葉県浦安市議団長は、「国は住民の声に耳を傾け、騒音問題が生じたときはすぐに改善すべきです」と強調します。

 大田区議会羽田空港対策特別委員会の日本共産党のすがや郁恵、清水菊美両委員は、「早朝の区内上空飛行便は直ちに廃止を求めます。ことに心配される深夜・早朝便は問題があれば国は直ちに改善すべきです。航空機、車両の排ガスによる大気汚染は、国、都、区が改善に責任をもってほしい」としています。

 日本共産党の衆院国土交通委員の穀田恵二委員は「ハブ空港を目指すと便数増ばかりを先行させる『住民おき去りの空港』であってはなりません。安全優先で騒音や大気汚染対策を十分にとるよう求めます。そのために国は周辺住民の声にこたえ、自治体とよく協議をすべきです」とのべています。





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