2010年10月18日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
坂道の上に立つ民家の庭に、ムクゲが咲いています。見上げると、白い花が澄みわたる秋天に映え、曇天の日も花の周りの空気はすがすがしい▼漢字で木槿と書くムクゲ。「槿花一朝(きんかいっちょう)の夢」、あるいは「槿花一日の栄」という言葉があります。物事のはかなさのたとえです。ムクゲの花は、朝早くに開き、夕方にはしおれて落ちます。いのち短い一日花です▼しかし、韓国ではムクゲを「無窮花(ムグンファ)」といいます。限りのない無窮。ムクゲの花期は長い。日本でも梅雨明けから10月まで、1年の3分の1近くを、散っては咲き散っては咲く。人は、そのたくましい姿に、ムクゲを国花と定める韓国の人々の生き方を重ねます▼もちろん、国花と国民の性格は、お手軽に結びつけられません。日本の事実上の国花サクラの花期は、はかないほど短い。だからといって、日本人がおしなべて根気に欠けるなんて話はないのですから▼ところで、種類ゆたかなムクゲの中で、もっともよく目立つ色合いの花は、真ん中が赤く周りが白い。“日の丸ムクゲ”ともよばれています。やはり、抵抗を覚えてしまう呼び名です。かつて日本の植民地だった時代、韓国の人々が慰めとし、心のよりどころとした花に、大日本帝国のシンボルだった「日の丸」の名とは…▼日本が韓国人から国を奪った「併合」から100年。清らかなムクゲの花が、語りかけてくるような気がします。「いつまでも、歴史を忘れないで」と。あの坂の上に咲くムクゲも、“日の丸ムクゲ”です。