2010年10月17日(日)「しんぶん赤旗」

検証特集 尖閣問題と日本共産党


 沖縄・尖閣諸島問題で、日本の領有は歴史的にも国際法的にも正当だと、明確な根拠を示した日本共産党の立場と見解が注目されています。国会では、各党ともこの問題をとりあげていますが、同諸島沖で海上保安庁巡視船と衝突した中国漁船の船長釈放をめぐる「政治介入」問題が中心で、領有権の根拠を示しての追及はありません。日本共産党と他党とのちがいの根本にはなにがあるのか―。


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(写真)仙谷官房長官(左から3人目)に見解を手渡す志位委員長(同2人目)、左端は穀田国対委員長、右端は笠井衆院議員=4日、首相官邸

「政府以上の見解」なぜ?

 「尖閣問題の解決でもっとも重要なのは、日本の領有の正当性を粘り強く国際社会に訴えていくことだ。共産党の見解に敬意を表する」

 日本共産党が4日に発表した見解―「尖閣諸島問題 日本の領有は歴史的にも国際法上も正当―日本政府は堂々とその大義を主張すべき」―について、防衛省関係者はこうのべました。

 ある外交官OBは、「政府以上だ。政府の立場はあまりにひどい」と評価。アジア諸国のある駐日公使は、「中国にこれだけのことをいったのは見事だ」と感想をもらしました。

 こうした評価を得ている見解はなにを明らかにしたのか―。

 日本共産党は1972年の見解以来、尖閣諸島の日本領有は歴史的にも国際法上も明確な根拠があることをすでに明らかにしてきました。

 今回、さらに突っ込んで「尖閣諸島は台湾に付属する島嶼(とうしょ)として中国固有の領土であり、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったもの」との中国側の見解を検証。日本による侵略戦争だった日清戦争の講和を取り決めた1895年の下関条約と、関連する交渉記録を詳細に検証し、「日本による尖閣諸島の領有は、日清戦争による台湾・澎湖(ほうこ)列島の割譲という侵略主義、領土拡張主義とは性格がまったく異なる、正当な行為であった」と結論づけたのでした。

 「過去の日本による侵略戦争や植民地支配にもっとも厳しく反対し命がけでたたかってきた政党」(志位和夫委員長)ならではの分析と主張でした。

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(写真)閣諸島問題の「見解」を紹介している「赤旗」号外

侵略への態度が分かれ目

 日本共産党のこの立場は、本腰を入れた政治的・外交的対応をしてこなかった歴代日本政府の対応と比べると鮮明です。

 自民党政府は、日中国交正常化(1972年)や日中平和友好条約(78年)の交渉過程では、尖閣諸島の問題には触れず、棚上げするという態度をとりました。92年に、中国が「領海法」という国内法で、尖閣諸島を中国領に含めたことにたいしても、日本側は事務レベルでの抗議にとどまりました。

 その本質はどこにあるのか。自民党政権が侵略戦争に無反省のまま国交回復をしたために、「侵略戦争に乗じて尖閣諸島を奪った」という中国側の主張に正面から反論できず、卑屈な対応になったところにありました。

 その最たるものが、日中国交回復を図ったときの田中内閣の対応です。福田赳夫外相(当時)は、国交正常化交渉にあたって、「(中国から)物言いがついては困るから、ことは荒立てないほうがいい」として、「尖閣列島の領土問題を話し合う考えはない」(1972年5月25日、衆院内閣委員会)と言明しました。

 78年の日中平和友好条約批准の際も、ケ小平中国副首相の「棚上げ」論に追随。園田直外相(当時)は「藪(やぶ)をつついて蛇を出す結果になってしまっては元も子もない」(『世界 日本 愛』)と回想しています。

 侵略戦争に無反省のままだと、侵略戦争で不当に奪った領土と、平和的に領有した正当な領土との区別もつかないことになります。

 今回も、菅・民主党政権は当初、「領土問題は存在しない」といって、中国政府にも国際社会にも日本の領有の根拠を主張する外交はしませんでした。

外相は「大いに反省」HPにも変化   

 尖閣諸島領有の大義を堂々と主張すべきだとの日本共産党の追及は、政府を動かしつつあります。

 9月30日の衆院予算委で日本共産党の笠井亮議員が、日本政府が尖閣諸島の領有の正当性を訴えてこなかったことを指摘すると、前原誠司外相は「大いに反省するところがある」と答弁。志位委員長が党見解をもとに追及した、衆院代表質問の翌日の8日には外務省がホームページに、尖閣諸島問題での「Q&A」を掲載しました。それまで掲載していた簡単な基本見解には欠落していた下関条約の経過も解説するようになりました。


「読売」コラム

「尖閣」アピール“1番は共産党”

 16日付「読売」夕刊のコラム「とれんど」が「『尖閣』アピール、1番は?」との見出しで、「外務省よりもずっと詳細に尖閣問題を扱っている政党がある」と述べ日本共産党のホームページ(HP)を紹介しています。

 同コラムは、外務省が尖閣諸島に関するHPを更新したが、竹島問題や北方領土など「他の主権絡みの問題と比べると、まだまだ見劣りする」と辛口の評価をくだしています。

 これと対比させ、外務省HPよりも詳しく扱っている政党があると強調。どこかといえば、「政権党の民主党でも、菅政権を『弱腰』と批判する自民党でもない。共産党である」と紹介。「事実関係をひもといて日本の主権の正当性を詳述する特集ページを設け、トップページから簡単にアクセスできる」「尖閣諸島を日本領として扱った中国の1950年代の地図や人民日報の記事まで、ダウンロードできる」と一見をすすめています。


千島列島・竹島でも道理ある立場

 領土問題は、国家の主権や国益にかかわる重大問題です。日本共産党は、旧ソ連が不当に奪った千島列島や韓国と領有権を争う竹島の問題でも、道理ある立場を示しています。

千島列島

 日本共産党は、国後(くなしり)からカムチャツカ半島の南西の占守(しゅむしゅ)までの千島列島の全体と、北海道の一部である歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)のロシアからの返還を求めています。千島列島は、江戸の末期と明治初期に帝政ロシアとの交渉で、平和的に日本領として確定。その千島と歯舞、色丹を1945年の第2次世界大戦直後、併合したのがスターリン指導下のソ連でした。これは第2次大戦の戦後処理の大原則「領土不拡大」に反する不当なものです。日本政府は、千島の南半分の国後、択捉(えとろふ)と、歯舞、色丹の4島だけを「北方領土」として返還要求していますが、その道理のなさが日ロ間の交渉での行き詰まりと迷走の一因になっています。

竹島(韓国名・独島)

 日本共産党は1977年の見解で、竹島が1905年に日本に編入したことには歴史的な根拠があると主張しました。同時に、当時は日本が韓国を植民地にしていく過程であり、それらも考慮して韓国側と共同して歴史的検証を進めるべきだと主張しています。





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