2010年10月14日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 思いっきり口を開けて泣いていた、七つの息子さんがかけよる。フロレンシオ・アバロスさんが700メートルの地底から69日ぶりに生還した瞬間を、忘れないでしょう▼東京タワーの倍近く深い穴を掘り下げ、直径54センチのカプセルを行き来させ、一人ずつ救い出す。名づけて「不死鳥作戦」。チリのサンホセ鉱山の落盤事故は、史上かつてない形で喜びの結末を迎えようとしています。残る全員、無事に帰れますように▼閉じ込められた労働者は、規則正しい生活をおくり心身の平常と健康を保ってきたそうです。8時間働き、8時間眠る。あとの8時間に、食べる、体操する、音楽をきいたりゲームで遊んだりし、家族に手紙を書く…。19世紀いらい労働者がめざした、8時間労働制の生活の姿です▼最年長のマリオ・ゴメスさんは63歳。まもなく仕事から退くつもりでした。作業用の新しい車を運転してみたくて引退を延ばし、事故にあいました。呼吸器を患い、すでに指を3本失っていました▼きびしく危ない鉱山の仕事。マルクスが『資本論』の中で、炭鉱経営者の搾取のどん欲さに怒って「もうたくさんだ!」と叫んだ時代よりはましでしょう。しかし最近、アメリカや中国でも痛ましい人命事故が起きました▼地底で生きぬき、人間の底力を示し人々を勇気づけた33人。彼らの心に希望の灯をともした家族や仲間。やがて、事故後の68日間の物語が語り継がれてゆくでしょう。が、なぜ落盤が? 事故前の検証が忘れ去られては困ります。





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