2010年10月14日(木)「しんぶん赤旗」

主張

都市再生機構

民営化やめ公共の役割果たせ


 今年4月の「事業仕分け」で「民営化」が提示され、居住者から不安の声が上がっていた都市再生機構(UR)の見直しを検討していた国土交通省の「都市再生機構のあり方に関する検討会」が報告書を馬淵澄夫国交相に提出しました。

 報告書は、「A完全民営化」「B政府出資の特殊会社化」「C新しい公的機関化」の3案を検討し、委員の意見を示しています。報告を受け馬淵国交相は、「民間会社化することは現実性に乏しい」としたうえ、「社内分社化した新しい公的法人にするか、全額政府出資の特殊会社とするか検討したい」と発言しました。

賃貸住宅団地を削減

 「完全民営化」を選択しなかったのは当然です。しかし、賃貸住宅団地については、「ストック(在庫)の削減を進めることにより、資産・負債の圧縮を図る」と、自公政権時の10万戸を対象に10年間で5万戸を削減する「ストック再生・再編方針」をいっそう進める方向です。対象となった団地では、入居募集を中止し、実質的な追い出しも進んでいます。「居住者の居住の安定には十分配慮させたい」(国交相)というなら、これを直ちに撤回すべきです。

 機構は2004年に都市基盤整備公団から独立行政法人に移行して以降、賃貸住宅部門の業務が縮小され、もっぱら不良債権化した大企業跡地の買い取りや国際競争力強化のためと称する都市再生事業に特化してきました。

 その結果、4000億円を超す繰越欠損金(累積赤字)を抱えています。放漫経営により次々と関係会社がつくられ、高級官僚が天下りし、関連事業をそれらの会社が独占受注する“利権構造”が形づくられています。

 賃貸住宅部門の収益が都市再生事業の赤字の穴埋めにあてられています。賃貸住宅部門は600億円に達する黒字経営であるにもかかわらず、3年ごとの家賃値上げをおこない、住宅の修繕や改修を後回しにするなど、高齢・低所得化がすすむ居住者の生活苦に追い打ちをかけ、居住の安定を妨げてきました。

 都市再生事業は廃止を含め抜本的に見直し、賃貸住宅部門とは完全に切り離すべきです。UR賃貸住宅のあり方について、公共住宅としての役割を明確にすることが大事です。検討会の委員からも「大都市部において、高齢者層の爆発的な増加を踏まえれば、住宅政策、福祉政策における…役割が機構には期待され、公的機関が事業を継続する必要性も認められ得る」との意見が出されました。

 賃貸住宅の家賃も、市場動向に連動させる「近傍同種家賃」ではなく、収入に応じた制度などに改め、高齢者や低所得者などが安心して住み続けられるようにすべきです。

住居の保障は政治の課題

 08年以降の「派遣切り」で仕事も住まいも失い賃貸住宅に入居しようにも保証人がいない、敷金など入居の初期費用もなくネットカフェで過ごす―。新たな住宅問題がクローズアップされています。

 高齢者や母子家庭への賃貸住宅への入居拒否、ローン破産や追い出し屋による住まいの喪失もあとを絶ちません。住居の保障は個人の努力だけでは解決できません。政治と行政の課題であることを、政府も機構も銘記すべきです。





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