2010年10月14日(木)「しんぶん赤旗」
米が未臨界核実験
オバマ政権で初 核兵器維持目的に
【ワシントン=西村央】米政府が9月15日にネバダ州の核実験場で、未臨界核実験「バッカス」を実施していたことが12日までに分かりました。米国での未臨界核実験は1997年7月に始まり、今回で24回目。ブッシュ政権下の2006年8月以来4年ぶりで、オバマ政権になってから初めてです。米エネルギー省が発表しました。
国家核安全保障局(NNSA)によると、実験はロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)の手で地下約300メートルの核実験場で実施され、「核兵器の安全性、信頼性を維持するのに必要な科学的データを得るためにおこなわれた」としています。
今回の実験について、核時代平和財団ニューヨーク事務所のアリス・スレーター所長は「核爆発の模擬状態を作り出し、コンピューターで情報収集をしており、核兵器の維持、改良に使われる。核保有の継続につながるもので、核保有国に廃絶に向けた明確な約束を課した核不拡散条約(NPT)の精神にも反する」と指摘します。
核兵器廃絶を要求してホワイトハウス前で24時間の“監視”行動を続ける「プロポジション・ワン」のエレン・トーマスさんは「オバマ大統領の言う核兵器のない時代実現に、今回の実験が逆行であるのは明らか。米国が実験を続けることは、イランの核兵器開発がとりざたされるなか、これらをとめる説得力を弱める。核兵器廃絶の声を高めることが必要だ」といいます。
「身勝手な行為」
抗議の座り込み広島県原水協など
広島県原水協と広島県被団協は13日、広島市平和記念公園で、未臨界核実験に対する抗議の座り込みを行いました。約50人が参加。「核兵器廃絶の世論に背く核大国の身勝手な行為」とする抗議文を読み上げました。
また、広島、長崎両市長らが、「激しい憤りを覚える」と抗議しました。
未臨界核実験 核物質を核分裂が連続的に起きる臨界に至らない条件において行う核兵器実験をいいます。高性能爆薬による爆破・圧縮、大出力レーザー照射によって行われます。新型核兵器や既存核兵器の改良・維持のために行われます。爆発を伴わないことから、包括的核実験禁止条約(CTBT)の対象外とされますが、核軍縮と核兵器廃絶を目指すとしている同条約の精神に反するものです。
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