2010年10月13日(水)「しんぶん赤旗」

主張

通貨安競争

協調して不均衡の解決を


 7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)と国際通貨基金(IMF)の総会は、焦点の通貨問題で監視強化を確認したものの、実質的な話し合いは来月にソウルで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に先送りしました。

 輸出拡大をねらって自国通貨を切り下げる「通貨安競争」は各国の対立を促進するだけです。競争手段の金融緩和は投機マネーを膨らませ、混乱をもたらします。

中国非難で解決しない

 日本と欧米の主要資本主義諸国は、2年前の金融危機を契機とした恐慌から抜け出せないでいます。失業増や社会保障切り下げなど国民に犠牲がしわ寄せされ、国内の需要不足から「二番底」の懸念が強まっています。各国は財政悪化から政策手段が限られ、輸出拡大に力を入れています。手っ取り早い手段として、自国通貨を切り下げる動きが強まっています。

 米国は基軸通貨国の特権として、膨大な貿易赤字を長期的に出しながら、アジアなどからモノを買ってきました。米国には、金融危機をもたらした住宅バブルの原因が「世界的不均衡」にあったとする主張があります。赤字をまかなうために世界から流入したマネーがバブルを引き起こしたとして、責任を外国に押し付ける議論です。だからといって、持続不可能な貿易不均衡を放置し続けることはできません。

 米国は矛先を、貿易黒字を拡大しながら人民元のレートをドルに連動させている中国に向けています。中間選挙を目前にして中国非難に拍車がかかり、下院が対中制裁法案を可決したほか、中国を「為替操作国」と認定する可能性も出ています。ユーロ安で輸出を拡大してきた欧州諸国からも、元は安すぎるとの批判が出ています。一方、中国は元を一挙に引き上げれば、失業が増え、国内が不安定化すると反発しています。

 中国を悪者扱いすれば米経済が回復するものではありません。米国の製造業は多くの分野で空洞化し、構造的な弱さを抱えています。元切り上げだけで、工場が中国から米国に戻ってくるわけではなく、是正は米国自身の課題です。

 新興国からは、先進国の超低金利政策に批判が出ています。ブラジルのマンテガ財務相は「通貨戦争」の言葉を使い、投機マネーの流入によるバブル懸念や通貨高から、海外からの債券投資への課税を2倍に引き上げました。

 問題は基軸通貨のあり方にもかかわっています。国連事務局が6月に出した報告は、ドルは価値を安定させられないとして、ドルに依拠した世界の準備制度を変える必要を指摘しています。

 対立をあおる通貨安競争はやめるべきです。通貨は市場だけに任せるべきでもありません。不均衡は国際協調で解決を図る以外にありません。中国など新興国が参加しないG7で問題を解決できないことがあらためて明らかになった以上、G20サミットで対立を克服しながら、解決の方向を探る必要があります。

日本は内需中心で

 日本にとって円高は、大企業が国内での需要不足から、猛烈な輸出攻勢をかけてきた結果です。円高を抑えるにも、日本は内需中心の経済政策に転換すべきです。国民生活を豊かにすることが国際的な協調にもつながる道です。





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