2010年10月11日(月)「しんぶん赤旗」
国連生物多様性条約第10回締約国会議
COP10 ここが焦点
種の保全 持続利用 利益配分
失われつつある地球規模の自然や生態系を守り、生物資源の持続的利用をすすめるための新たな国際ルールづくりをめざして、名古屋市で開かれる国連の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10、18日開幕)。同条約に基づく遺伝子組み換え生物の国際取引のルールを定めた「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」第5回締約国会議(MOP5)も11日から同市で始まり、生物多様性をめぐって活発な論議がかわされます。COP10の焦点は――。
「新戦略計画」の採択
20年までの目標決める
COP10がこれほど注目されるのはなぜか。条約の三つの目的((1)生物多様性の保全(2)生物資源の持続可能な利用(3)遺伝資源の利用から得られる利益の公正・公平な配分)達成のための新たな国際的ルールづくりをめざしているためです。
生物多様性条約市民ネットワーク(CBD市民ネット)運営委員の道家哲平さん(日本自然保護協会国際担当)は、2020年の世界の目標を決めることなど、重要な課題がいくつもあると、COP10に注目します。
その焦点の一つは、生物多様性のあらゆる問題をあつかう加盟193カ国・地域の新しい目標となる「新戦略計画」の採択です。
新戦略計画は、2020年までの今後10年間で条約加盟国がやるべきことをまとめた目標で、「2020年目標」(名古屋ターゲット)とも呼ばれます。新戦略計画は「生物多様性を喪失させる根本原因に対処する」など5本柱で、そのなかに「生物多様性の宝庫であるサンゴ礁や沿岸域の破壊行為を止める」などの20項目の目標を盛り込んでいます。
しかし、この新戦略計画「2020年目標」については、▽効果的かつ緊急な行動を実施して「2020年までに生物多様性の損失を止める」▽生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急な行動を実施するという2案が提案され、どちらで法的拘束力ある目標の合意ができるのか、今後のとりくみにもかかわるだけに行方が注目されています。
数値目標をめぐっても議論が分かれたままです。研究者や各国政府が参加する世界自然保護連合(IUCN)は、COP10を前に、2020年までに少なくとも陸地の25%、海域15%を開発などを制限する保護地域にすることなどを提案、新戦略計画に盛り込むことを求めています。
新枠組み「名古屋議定書」の採択
遺伝資源ルールづくり
COP10のもう一つの重要課題は、遺伝資源(遺伝子情報など)から得られる利益の公正・公平な配分(ABS)にかかわる新しい国際枠組みとなる「名古屋議定書」の採択です。遺伝資源を活用した市場は、国連環境計画によると年間8000億ドルから1兆ドルと試算され、途上国の生物資源の遺伝子情報などから得た利益の公平な配分のルールづくりを目指して交渉が続けられてきました。名古屋議定書は、途上国にも還元するルールをめぐって、主要な論点で両論併記されたままです。
沖縄新基地・諫早干拓…
問われる日本の責任
こうしたなかで問われているのが、2020年目標合意にむけて、議長国としての日本の責任です。松本龍環境相は、メディアで自然環境と「国益を両立させる」などと発言。9月下旬にカナダ・モントリオールで開かれたCOP10作業部会に、菅首相が欠席し関係者に失望をあたえたと報道されました。
日本政府の姿勢の背景には、日本経団連がことし3月にまとめた「遺伝資源へのアクセスと利益配分に対する基本的な考え方」で「合意すべきでない事項」を提言。このなかで「イノベーションが阻害され、経済発展に重大な影響を及ぼしかねない」と、法的拘束力のある議定書に抵抗していることがあります。
7日に国会で開かれた「よみがえれ!有明海 即時開門を求める院内集会」。諫早湾干拓事業による赤潮発生などでの有明海の漁業破壊や沿岸住民の生活が脅かされていることが報告され、日本共産党の紙智子参院議員は「COP10で生物多様性が注目されるときに、議長国がこんな反する行為を行っていることは許されない」と発言。よみがえれ!有明訴訟弁護団・原告団らがCOP10のイベントで「生物多様性保全に反することを議長国の日本がやっている」と告発する予定です。生物多様性を破壊する沖縄県の米軍基地計画などの中止を訴える集会やイベントなどを環境市民団体らがCOP10で計画しています。
生物多様性条約事務局が4年に1度まとめている「地球生物多様性概況」(5月発表)は、生物多様性の損失から後戻りできなくなる「転換点」が近づいていると、こう警告しました。「人類文明が過去1万年にわたってよりどころにしてきた比較的安定した環境条件が今世紀以降も継続するかどうか、つぎの10年か20年にとる行動が決める」
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