2010年10月11日(月)「しんぶん赤旗」

主張

「思いやり」増額要求

米政府の言い分に道理はない


 在日米軍「思いやり予算」の日米交渉で、米政府が「減額」に反対し、「増額」を求める圧力をむきだしにしています。

 米国務省高官は9月29日、「思いやり予算」の「水準を上げていきたい」「増額は適切」とのべ、28日に来日したグレグソン米国防次官補も米軍基地内に太陽光発電などを設置することなどを口実にして「思いやり予算」の増額を迫りました。もともと「思いやり予算」は米軍地位協定でも日本側に負担義務はありません。米政府が「既得権」とみなして日本に増額の圧力をかけるなど言語道断です。

「抑止力」論をテコに

 米政府が対日圧力を強めているのは、日本政府に高圧的な態度で臨むことで、日本が来年度予算で「思いやり予算」を減らさないようけん制し、「思いやり予算」を拡大した米軍地位協定の特別協定が来年3月に期限が切れるのを機に、逆に増額に転じさせるためです。何がなんでも日本に増額を認めさせようというその態度は、日本の予算編成権への干渉としかいえません。北沢俊美防衛相でさえ、「減額がどうの増額がどうのとまでいわれる筋合いはない」と不快感を示しています。

 米軍地位協定は、米軍の維持経費は「合衆国が負担」と定めています。にもかかわらずベトナム戦争後の米政府の分担要求に屈して、米国の財政悪化を口実に1978年に日本政府が始めたのが「思いやり予算」です。戦闘機保護施設(シェルター)や米軍家族住宅などのあらゆる施設が対象です。

 87年締結の日米特別協定も、米軍負担が明確な日本人従業員の給与や光熱水料、訓練移転費を日本側負担としたもので、そもそも不当です。米政府の増額要求には道理がまったくありません。

 米政府は「思いやり予算」の呼び方をやめて“防衛分担経費”のような呼び方にすることを求めています。世界の軍事情勢の変化を口実に日本にいくらでも増額を迫る根拠にできると考えてのことです。実際クリントン米国務長官は9月23日の日米外相会談で、「対中抑止力の対価として日本の負担引き上げは不可欠」とのべたと伝えられています。

 日米両国が中国とことを構えているわけでもないのに、クリントン長官が「対中抑止力」をもちだしたのは、米軍を日本のための「抑止力」という呪縛(じゅばく)にとらわれている菅直人政権の弱みにつけこんだものです。前原誠司外相は在日米軍を「中国をけん制するための抑止力」だと認め、クリントン長官の言い分に同調したといいます。これでは米政府の道理のない「思いやり予算」増額要求の批判さえできません。

「全廃」検討するときだ

 米政府が「思いやり予算」への圧力を強めているのは、日本に米軍を駐留させる方が米国内に置くよりも「安上がり」だからでもあります。総額3兆円といわれる米軍「再編」経費の日本負担もはじまり、日本の米軍経費負担は大きくなるばかりです。「世界一寛大」な「思いやり予算」を続けるのでは、米政府が在日米軍基地をなくすはずはありません。

 政府はいわれのない米政府の「思いやり予算」増額要求を断固拒否すべきです。米軍基地をなくすためにも、「思いやり予算」の全廃がいよいよ重要です。





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