2010年10月10日(日)「しんぶん赤旗」
臨時国会 各党の立ち位置くっきり
菅改造内閣発足後はじめての臨時国会。菅直人首相の所信表明に対する衆参の代表質問が6〜8の3日間、行われました。内政・外交の焦びの課題をめぐって鮮明になった各党の立ち位置は―。
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経済対策
共産党 内需の底上げで打開
民主 法人減税訴え 自民 派遣規制反対
深刻化する国民生活を守り、経済危機をどう打開するか―。
この問題で「国民の暮らしの実態を直視し、苦しみに心を寄せることが、日本の政治に責任を負うものの務め」との立場で論戦を展開したのが日本共産党です。志位和夫委員長は7日の衆院代表質問で、労働者・国民が苦境にある一方で、大企業は「空前の金余り」状態にあると指摘。大企業の巨額の資金を、「投資や雇用など生きたお金として日本経済に還流させることが、日本経済の危機を打開するために必要不可欠だ」と説きました。
問題は大企業の内部留保の「還流」をどう実現していくか、です。志位氏は「経済危機を打開する唯一の道は、家計を直接応援し、内需を底上げする政策への転換をはかることにある」と示しました。そのために労働者派遣法の抜本改正など人間らしい安定した雇用や後期高齢者医療制度の即時廃止など社会保障の立て直しなどを求めました。
これに対し、民主党は、菅首相も「富が広く循環する経済構造を築く必要がある」と認めざるを得ません。しかし、結局は大企業の「成長」に頼るしかないという立場から抜け出せないため、口をついて出てくるのは、大企業のための法人税減税です。
同党の岩本司参院議員は「法人実効税率の引き下げ等、わが国の立地競争力を高めていくことが肝要だ」と主張。菅首相は「企業の海外流出を防ぐ」として、法人税減税の先行実施の姿勢を示しました。
自民党はどうか。代表質問前の民主党との補正予算協議で、「CO2の25%削減とか、派遣の規制強化、(最低)賃金(引き上げ)問題は、アンチビジネス的で企業に負担を強いるものだ」(石破茂政調会長)と、与党時代よりあからさまな財界寄りの立場を表明。本会議でも「円高、法人税高、派遣法改正の三重苦」「(CO2削減で)四重苦となりとどめを刺す」(片山さつき参院議員)と企業寄りの立場を鮮明にしました。
両党とも法人税減税の穴埋めに消費税増税を狙う姿勢では一体。「二大政党」のあいだに違いはありません。
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尖閣諸島
共産党 領有正当性根拠示す
他党 地検への政治介入問題に終始
中国漁船の衝突事件で焦びの外交問題となった尖閣諸島問題。日本の領有権の根拠を示し、与野党議員に反響を呼んでいるのが日本共産党の姿勢です。
他党は領有権があるとしかいわず、船長を釈放した地検への政治介入問題に終始。このなかで日本共産党は、4日の「見解」発表、続く7日の志位委員長の代表質問で論戦力を発揮。領有をめぐる歴史的経過、中国政府の主張の誤りを、歴史的・国際法的に明確な根拠を示して明らかにし、菅首相に堂々と外交交渉で大義を訴えるよう求めました。
志位氏が「見解」を仙谷由人官房長官に手渡すと、翌5日付「産経」は「首相官邸に乗り込み、対応が後手に回っている仙谷由人官房長官のねじをまくなど、積極的に動いている」と報道しました。
もう一つの重要な外交問題である沖縄普天間基地「移設」問題。菅首相は、「沖縄県民の負担軽減」を口にしながら、F15戦闘機による普天間基地の「目的地外着陸」(ダイバート)にはだんまり。名護市辺野古での新基地建設をうたった5月の「日米合意」に固執しています。自民党も新基地建設に「沖縄県民の理解をどう求めていくのか」(谷垣禎一総裁)と、新基地推進では一緒です。
これに対し、志位氏は新基地建設反対という沖縄県民の総意が何度も示されていることを突きつけ、「(新基地建設が)もはや不可能であることはだれの目にも明りょうだ」として、「『日米合意』の白紙撤回」「普天間基地の無条件撤去」を要求。ダイバートでも、菅政権の「アメリカにモノがいえない姿勢」を批判しました。
小沢氏喚問
共産党 ヤミ献金含めた解明を
菅首相 本人が判断し対応 望ましい
民主党の小沢一郎元代表の強制起訴を受け焦点となった「政治とカネ」問題。日本共産党など6野党の証人喚問要求に対し、“クリーンな政治”を標ぼうする菅首相は「本人が自ら判断し対応することが望ましい」と無責任な答弁に終始しています。
「証人喚問」の言葉も出さない及び腰で失笑を買ったのが社民党です。重野安正幹事長は「検察審査会の可視化とともに、小沢元幹事長の国会における説明を求めます」とのべ、検察審査会の方に問題があるかのような発言を行ったのです。同党は偽証罪に問われない政治倫理審査会での説明しか求めていません。
志位委員長は、「証人喚問を行い、収支報告書の虚偽記載だけでなく、ゼネコンによるヤミ献金疑惑を含めた真相の徹底的な究明をはかり、政治的道義的責任を明らかにすべきだ」と菅首相を追及。企業団体献金の禁止についても、「民主党と総理自身が約束してきた」とただちに行うよう求めました。
「ねじれ国会」への対応
互いに秋波送る首相と公明党
参院選で「菅政権にレッドカード(退場)を突き付けよう」と主張しておきながら、いま菅首相と互いに秋波を送りあっているのが公明党です。
菅首相は「公明党を含む各党からの提言を相当程度取り入れた経済対策を決定した」と持ち上げました。
一方、公明党も民主党が消費税増税に向けた与野党協議を模索するなか、「社会保障に関する与野党協議会を設置すべきです」(7日、井上義久幹事長)と提案。菅首相から「軌を一にするもの。他党の参加も含めた論議の進め方も相談に乗ってほしい」と協力を求められました。
公明党の山口那津男代表は菅首相の所信表明後に、記者団に問われ「一方の勢力に加担するとか対決するとかを決めてかかるものではない」と述べましたが、“実績”づくりのためならレッドカードを突き付けた相手との連携を否定しない態度です。