2010年10月10日(日)「しんぶん赤旗」
菅政権、TPP加盟検討
例外なく100%自由化狙う
菅政権、農漁業に追い打ち
菅直人首相は衆参両院での所信表明で、「環太平洋戦略的経済連携協定」(TPP)への参加(加盟)を検討すると表明しました。他の閣僚も相次いで加盟への積極姿勢を答弁などで示しています。TPPとは――。
TPPには、加盟国のシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリに加え、米国、カナダ、オーストラリア、ペルーなどアジア太平洋経済協力会議(APEC)傘下の国が加盟または今後の加盟の検討を表明。アジア・太平洋の10カ国以上が加盟する広大な自由貿易協定(FTA)になろうとしています。
“2国間”超え
これまで日本と他国とのFTAなどは、各国との2国間交渉と国会での承認を経て締結されてきました。TPPに加盟すれば、今後、全加盟国との貿易自由化が成立してしまうことになります。
TPPについては、農産物を含め「例外品目がなく100%自由化を実現する」、「自由化レベルが高く、極めて包括的」(石川幸一・亜細亜大学教授、国際貿易投資研究所発行『国際貿易と投資』秋号掲載論文)といわれています。日本がこれに加われば日本農業を壊滅的な危機にさらすことになります。
地域崩壊の道
それだけに、TPP参加の検討を表明した菅首相に与党内からも異議が出ました。7日の代表質問で、民主党の郡司彰参院議員副会長は「わが国がこれに参加する場合、国内の農林水産業に対し、これまでのEPA(経済連携協定)、FTAと比較にならないほどの大きな打撃を与えることは間違いない」と断じました。「食料自給率50%の達成が難しくなることはもとより、農村・漁村の雇用や所得が失われ、地域経済だけでなく、地域社会そのものが崩壊しかねない」とも述べました。
しかし、大畠章宏経済産業相は「TPP交渉への参加を検討し、アジア・太平洋自由貿易圏の構築を目指したい」と答弁しました。
同日、都内で開かれた「日米財界人会議」では、日本側議長の米倉弘昌日本経団連会長(住友化学会長)が、「われわれ(日米両国)がリーダー役を担って、アジア・太平洋地域の新成長戦略をつくりたい」と述べ、TPPを支持する立場を表明。前原誠司外相も講演のなかで、TPP加盟を検討していると表明し、11月のAPEC首脳会議までに検討のための「基本方針」をまとめるよう菅首相から指示されたことを明らかにしました。
翌8日、同会議は日米両政府に対し2015年までのTPP加盟締結を迫る共同声明を発表して閉幕。日米財界の要求に呼応する菅政権の姿勢が浮かび上がっています。(林信誠)
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