2010年10月7日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
あすは二十四節気の一つ、寒露。文字通り野草に冷たい露が宿り、コオロギも鳴きやんで秋の深まりを感じさせるころです▼しかし、ことしは暖かさが続いています。猛暑の名残でしょうか。そして、寒さは一気にやってくるそうです。温暖化のせいか、日本の四季から年ごとに、秋が省かれてゆくように思えます▼書家の榊莫山(さかきばくざん)さんは、晩秋の残照が好きでした。ゆく秋を惜しむように差してくる夕日の光。そんな時季を数々の書画に表しています。「風ハ林ヲ トオリヌケ シメジハ秋ノ ボレロニユレル」。いまにも踊りだしそうなシメジの絵。軽やかな筆づかいの字▼「ボレロ」は、よく聴いた高橋真梨子さんの歌「素足のボレロ」? 自然賛歌をうたい続けた榊さん。自然を壊す者への言葉は激しい。「国家のプロジェクト(事業)というのは、政治家と官僚、さらに知事や市長の遊びごとにすぎない。いまその工事のための借金の返済に、どれほど困っていることか」(『莫山歳時記』)▼学徒出陣で沖縄へ送られる途中、戦争が終わり命拾いしました。故郷の三重・伊賀への帰り道、原爆に焼きつくされた広島をみて、おののきました。戦争責任を負う者たちに対しても、放つ言葉は手きびしい▼「前衛」とよばれつつ庶民の心を書き表した、榊さんが亡くなりました。84歳。昨年の3月、本紙で思いのたけを語っていたのに。「ボクは昔から日本共産党が好きや。…政治や世界のことで、きちんと判断して発言するところが好きやな…」