2010年9月29日(水)「しんぶん赤旗」
主張
戦闘機の普天間使用
危険と爆音の増加許せない
米空軍嘉手納基地は、10月から来年3月まで2本の滑走路を順次改修するのに伴って、同基地所属の戦闘機を、撤去が求められている米海兵隊普天間基地に目的地外着陸させると発表しました。22日にはF15戦闘機2機が普天間基地を使用しています。
宜野湾市民は、普天間基地から飛び立つ海兵隊の輸送ヘリや輸送機などの爆音と墜落の危険で、平穏な生活を奪われています。そのうえ戦闘機までが飛来すれば市民の苦しみがさらに増大するのは明白です。イハ(伊波)洋一宜野湾市長が要求しているように、政府は米軍に中止を求めるべきです。
「世界一危険」なのに
目的地外着陸(ダイバート)は、目的の滑走路が天候不良で使えないとか、米軍機に不具合が生じた場合に、別の滑走路に代替着陸するものです。嘉手納基地では2本の滑走路を順次改修するため1本ずつしか使えなくなるというのが米軍の言い分です。その間戦闘機が普天間基地に離着陸し、宜野湾市民の頭上を飛行することになります。危険性と爆音被害がさらに増大するのは目に見えています。
イハ市長の中止要求に対して外務省の樽井澄夫沖縄担当大使は前原誠司外相に伝えるとのべたものの、日本政府はいまだに何の動きもみせていません。沖縄県民・宜野湾市民の死活問題なのに中止をアメリカに要求もしない菅直人政権の姿勢が問われます。
普天間基地による爆音被害と墜落の危険性は一刻も放置できない課題です。普天間基地爆音訴訟で福岡高裁が7月にだした判決(国が上告を断念したため確定)は、爆音の被害について、「生活妨害、睡眠妨害及びこれらに伴う精神的苦痛等の程度はかなり高い」とのべ、原告のほとんどに損害賠償を認めました。米軍は普天間基地についても午後10時から午前6時の間の飛行制限などを約束していますが、まったく守られていません。自民党時代と同じように、米軍の横暴勝手を許している民主党政権の責任は重大です。
判決が普天間基地について「世界一危険な飛行場」といっているのはとりわけ重要です。2004年8月沖縄国際大学への輸送ヘリの墜落事故をあげて、「米軍機の墜落への恐怖は現実的なものとなり、原告ら周辺住民の精神的苦痛が増大している」と認めざるをえなくなったのです。「世界一危険」な普天間基地をこれ以上放置するのは許されるはずはありません。
政府は普天間基地の「危険性除去」を強調し、辺野古「移設」の口実にしています。その一方で「危険性」を増大するF15戦闘機の目的地外使用を認めるのは、明らかに矛盾しています。「危険性除去」というなら、「日米合意」を白紙撤回し、普天間基地の閉鎖・撤去をこそめざすべきです。
米軍に中止を要求せよ
そもそも普天間基地は、安全確保のために滑走路に設定される「クリアゾーン」(利用禁止区域)内に学校も病院もあり、3千人を超す市民が生活するなど、アメリカの法律ではとうてい許されない状況になっています。戦闘機の追加使用はこうした宜野湾市民の苦しみをさらに増大させるだけです。認めるわけにはいきません。
政府は普天間基地への戦闘機の目的地外着陸をやめるよう、直ちにアメリカに要求すべきです。